さる8月7日と8日、日振協の日本語学校教育研究大会が、東京、代々木のオリンピック記念センターで行われました。
大会テーマは
「新しい日本語学校教育の質のかたちⅡ~変わる!変える!私たちの日本語学校教育」
おぉ、すばらしい。
なにかの始まりを感じさせるテーマですな。
まずは基調講演。
「日本語教育推進基本法と日本語学校教育」について
昨年の11月8日に超党派の国会議員による「日本語教育推進議員連盟」が発足し、現在「日本語教育推進基本法」の制定が目指されていることについて、日本語教育推進議員連盟会長代行の中川正春先生(元文部科学大臣)が1時間半、講演をされました。
要約するとこんな感じ。
〇アメリカのように、留学生が集まってくる国「留学生大国」にしたい。
〇志があり、しかもその能力を活かせる人には、さらにもっとスカラー(奨学金)を充実させるべき。
〇そのために、まずは日本をどうやって海外の皆さんに知ってもらうか。
〇日本語学校をどういう形で取り込んでいくのか。
〇まずは質の保証。教育の質の基準。
↓
具体的に効果的なチェック機能はどう作ればいい?
〇チェック機能設置後の運営状況を確認する必要あり
(設置後に問題を起こす学校もあるだろうから)
〇学校間同士でチェックする必要あり
↓
どういう風にお互いがチェックするのか?(第3者機関?)
〇現地で日本語を教える体制を作っては?
↓
ちゃんと制度化する必要あり
これ、私の書いたメモですが・・・。
まあ、今まで外国人留学生のために法整備したところで、票集めにはつながらないから、だれも何にも見向きもしなかった日本語教育に、超党派の議員さんたちが連盟作って、法律を作ってくれようとしているところは、今までにない新しい動きと言えるでしょう。
しかし、もうお分かりの通り、法整備するといいつつ、詳しいことはまだ何にも決まってない。
中川先生、しきりに「みなさんのお知恵を拝借したい。」と言ってた。
まだまだこれからなんですよ、というところ。
そして最後に「税金を使わずに日本語学校がビジネスモデルとして海外展開していく方法はありませんかね。」だって。
つまり、旗は振り始めたけど、具体的にどうしていいかはわからない。そして金もないので、金はどっかの金持ってる会社に出させる方法ありませんかね。
ということらしい。
そして午後からパネルセッション。
偉い先生方が壇上に上がり、お一人お一人の立場からこの「基本法で変わる!変える!私たちの日本語学校教育」についてお話をされ、その後、質疑応答というやつ。
質疑応答での質問。どこかの学校の先生が、
「今、非漢字圏学生が来日して結果を出すのに、2年ではロクな結果が出なくなってきている。日本語学校での教育機関を、2年から3年にすることはできないのか。」
という質問をされた。
ナイス質問!私もこれを質問しようと思っていたところでした!
ありがとう!
すると、壇上のパネリストのお答え。
「留学生にとって2年を3年にすることがベストな方法なのだろうか。何年も予備教育に費やすより、なるべく短い期間で準備を終えて、早く高等教育機関に進学させてあげるほうが、学生本人のためではないか。だとしたら、日本語学校での教育機関を2年から3年に伸ばすよりも、なるべく早く進学させてあげるほうに注力すべきでは?」
さて、皆さんはどう思いますか?
私はこの答えが一事が万事、本日の全てを象徴していると思ったんですが。
日本語ゼロレベル状態で入国してくる非漢字圏学生が、日本で大学(しかも上位校)を志望したとして、その希望をかなえてあげるのに一番必要な力とはなんでしょう?
私は「教師の力」だと思います。
もちろん、バイトを全くしなくても大丈夫なお金のバックアップや、
ある程度の勉強の素養、自律学習可能であることや、
来日前から進学を志望する理由がはっきりしているなど、
他にもいろいろ必要な条件はありますが、
一番必要なのは、教師の指導力。
短い期間で初級を、点数が取れるレベルではなく、運用産出できるレベルまで引き上げて終わらせ、
中級では教科書をこなすだけでなく、早くから新聞などの生教材で時事に触れ、自分が(自国の大学ではなく)日本の大学へ進学する意義を見つけ出させ、
「読」「書」だけでなく「話」「聞」の4技能をフルに使って自分の意見を作り、伝える力を養わせる。
そしてそれらの力を使って、短い2年の中で、受験のためにいつまでに何をすればいいかを効率よく導くことができる。
そして、受験する学校のデーターを集めて分析し、最適の志望校を選別することができる。
これはすべて日本語教師の力。
しかも、昨日今日教師になった新人には、逆立ちしたってこんな芸当は無理。
しかし経験だけ長ければ、どの日本語教師でもこんなことができるようになると思ったら大間違い。(できるようになった気でいる教師はたくさんいますが(笑)。)
結果の出にくい非漢字圏学生を、
来日後、ゼロからスタートさせて、
短期間で、就職率のいい高等教育機関に進学させようと思ったら、
まずは力のある教師を育成することが必要なのではないでしょうか?
なのに、午前中の中川議員のお話の中でも、日本語教師の待遇改善については、ほとんど話に出ず。
そして午後からのパネリストのお偉い先生方からも、教師不足の問題、教師養成、教師の待遇改善については、一切触れられず。
420時間のテコ入れとか、やることはいっぱいあると思うんですが。
そしてせっかくのナイス質問の答えがこれ。
結局、いつもこうなんですよ。
旗を振って総論を語り、理想を語るのは簡単。
でも、そのためにまず何を、誰が、どのようにするのかは、考えない。
そして何かが上の力で決められ、見切り発車で何かが始まり、現場は翻弄され、結局結果までつながらない。
まるでデジャブ。前にもこんなこと、ありましたよね。
パネリストの先生方は、現場の事は多分あんまりわかってない。
だから、「早く大学へ行く力をつけてあげて、卒業させてあげて。」なんてこと、簡単におっしゃる。
この教師不足の中、
そして非漢字圏学生がどかどか増える中、
新人教師ばかりに、ゼロ非漢字を丸投げする学校も少なくない中、
「短期間で大学へ進学させてあげて。」
って簡単にさらっと言っちゃう。
できるもんならやってみな!っつーの。
いや、ま、できる学校さんもあるにはあるんでしょう。
漢字圏の国から、できる学生ばかり選別して入学させたり、
受験塾と提携して、最初から午前は日本語学校、午後は受験塾というふうにダブルスクールありきで入学させたりという学校。
でも、そんなことができる学校の方が少ないのではないですか?
まあ、明日から何をしたらいいかわからず、翻弄されている教師が多いからこそ、私の実践セミナーを受けたいという方も多いのでしょう。
でもちっとも喜べない。
こんな状態で日本を留学大国にする。ってか?
コンセプトはいいけど、そのための踏み出す第一歩はどこへ向けるべきなのか、誰も問題にしないとは。
なんか簡単に考えてますね。
問題はもっと根深いというのに。
ねっ、象徴してるでしょ。
ま、グチグチ言ってても解決にはつながらないので、まずはできることからやるしかないです。
一つ、お知らせです。
私の先輩の先生のお声がけで、関東圏の教務主任や校長クラスの方を集めて、ところも同じこのオリンピックセンターで、9月2日(土)、「首都圏日本語学校 教務主任会議」をやります。
これは、、日振協の維持会員校、非加盟校関係ありません。
もうすでに各学校の代表メールか主任、校長のどなたかのメールには、お知らせが行ってるはずです。
*「東京」ではなく「関東圏」ですよ。200を超える数の学校にすでにメールを送ってます。
私も及ばずながら、お世話役をやらせていただいています。
お題は
①「就業規則」「労働条件」「労働条件」について。
②専任、非常勤講師の「仕事への向き合い方」をどのように育てるか
③そのほか情報交換、意見交換
メールをもらっていない、送ってほしいという学校の方がいらっしゃいましたら、私にメールアドレスをのせたメッセージください。
結論!
偉い人のやることは偉い人に任せて、まずは私たちの力で、出来ることからやりましょう。
一歩でも前進しましょう。
私たちの職場環境を少しでも良くして、良くならない学校が自然に淘汰されるシステムを作りましょう。
それはやがて留学生のために、より良い環境を作ることにつながると信じて、自分たちは自分たちで力をつけましょう。
ところで、衆議院が解散したら、このありがたい議員連盟ってどうなるの?