日本語学校、新規校設立ラッシュに考える事 | 管理職日本語教師の、相当深~いつぶやき。

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私たちの可能性は、こんなもんじゃない。

最近の日本語学校新設校ラッシュ。


いや、うちも新設校なんで、その中の一つなんですが。


今回新設校を立ち上げてみて、いろいろわかりましたよ。

いい事も悪い事も。


いろいろ勉強させてもらいました。


このような内容を、4月25日、渋谷で行われた

「留学生サポートフォーラム」~2016年留学生入試の総括と新年度への課題~

でお話しさせていただくチャンスがありましたので、ここでもう一度まとめてみたいと思います。


前述の通り、まさに今、新設校ブーム。


なぜそんなに日本語学校を作りたい人が多いの?


→そりゃ今、留学生が増えてますから、留学生がらみの商売は儲かるわけです。


別に日本語学校じゃなくても、

・留学生のための携帯電話の商売

・留学生のためのアパート紹介の商売

・留学生のためのアルバイト紹介の商売

・留学生のための進学塾

・留学生のための就職あっせん業者


こんなのもどんどん増えてます。


さて、我々の商売、日本語学校。


詳しい数はわかりませんが、うちの学校(2016年4月開校)と同期に申請した日本語学校の数は、1年間に全国で100を超えたそうです。(入管の人に聞きました。)


そのうち、10月開校の学校もあるので、半分としても50校が4月開校を目指したわけです。

いや、4月開校の方が、数は多いと思うので、60校は超えてるかも・・・。


そのうち、うちの学校と並んで許可されて官報に載ったのは、26校だけ。


これが競争率としてどうなのか、厳しいのかそうでないのかはわかりません。


ただ、周りの既存校の方々からも、こんな声が聞かれます。


○教育理念や目標をしっかり持っている学校がどのくらいあるのだろう。


 ~まあ私から言わせてもらえば、新設校に限らず既存している学校でも教育理念に関して怪しい学校は結構多いですよ。パンフレットにはいい事載せてても、実際は非常勤講師に丸投げだったり、トコロテン方式に入れた学生を2年経って適当に追い出す学校の事です。~


~つまり「いい学校を作りたい」「いい学生を育てたい」・・・こんな小学生レベルの目標は掲げるけど、具体的な数字による目標がなかったり、机上の空論だったり、という低レベルの学校は、新設校、既存の学校に限らず、少なからず存在するということでしょうか・・・~


○ビジョンがないまま、流行のベトナム学生を集めれば儲かるなどと、思っていないだろうか。


~人数さえ集めれば、そりゃ金は儲かりますわ。でもそれが日本語学校の最終目的なんですか?金さえ儲かれば学生の人生はどうでもいいと思ってません?そしてそこで指導する教師も、経営者にとってはどうでもいい使い捨て?(教師を育てるには金がかかりますから。“文句があるなら辞めろ”的な使い方が経営者にとっては理想なのかも。)~


~そしてもう一つ金がかかるのが“良心的な進路指導”。自分の学校の進路指導が「良心的な指導」だと思っていても、実は受験指導素人集団が指導をしているフリをして、結果が出ないのを学生のせいにしている教師や学校が結構な数ありますが、これは良心的でもなんでもないですよね。~


○学生をかき集めるために、「留学不適格者」に、どんどん手を出していないか。


~例えば、留学目的がなく、ただ金稼ぎが目的なのに「勉強したいです」と嘘をついて留学ビザを申請したり、親の経費支弁は望めないのに、親戚中から金を集めて書類だけ取り繕ってビザを得た、本来は留学生の資格がない留学生を「留学不適格者」呼びます。~


~「留学不適格者」なのに、そうでないフリをする学生も問題ありですが、それをわかってて、学生を紹介する悪徳仲介業者、そしてそれでもそんな業者とツルむ日本語学校も悪の一員です。またそういう嘘つき学生や業者を見抜けないでだまされて粗悪品をつかまされる日本語学校は、学校なんてやめた方がいいです。~


○経営者は校長、主任など中心メンバーを、単なる「資格保持者」としか見ていないで、立ち上げのときだけ利用して、後は適当に学校がまわればいいと思っていないか?


~経営者と言っても、日本語学校現場経験者(いわゆる日本語教師)はほとんどいないです。いや、塾などの教育産業に従事していた事がある人でも結構少ないように思います。例えば経営者には、多角経営でエステやレストランなどを経営していたり、IT産業で設けて、「じゃ、次は日本語学校でもうやってみようか。留学生ビジネスって、今儲かるみたいだし・・。」というレベルの金持ち成金が結構多いように思います。教育理念や崇高な目標なんてあるのかどうか。~


~でもまあ経営者ってそんなもんですよね。金が儲かるかどうかにしか興味ない人がい多いようです。だからその学校の理念は、その下の校長や教務主任にかかってくると思います。しかし日本語学校の校長になるのには、「教育関連の仕事、もしくは学術または文化に関する業務を5年以上行った人」というルールがあるだけ。だから留学生や外国人に関する仕事をした事がない人も校長になれるわけです。もし経営者も校長も留学生を扱うのは初めて、という事になると、最終的にその下の教務主任が頼みの綱になってきます。~


~日本語学校での専任講師を3年以上勤めた事がある人が、教務主任になれる資格を持ちます。(ここで「えっ?3年やっただけで教務主任なんかやらせてもいいの?無理じゃない?」というお声が多々ある事は承知しておりますが、それは今はちょっとおいておきます。)・・・しかし昨今、この未曾有の教師不足の折、そんな有資格者、年間新しい教務主任が100人も、どっから出てくるんでしょうか?


~いや、「資格を持っているだけ」と言う人なら、いるかもしれません。でもその中からお飾りじゃなく、実際に自分の下に多くの専任講師や非常勤講師を従えて、現場を回していける力のある人が、果たして何人いるのでしょうか。また、「教務主任をやりたい。自分が教務主任になって、こんな学校を作って、こんな学生を育てたい。」という具体的なビジョンを持った人が、どれだけいるんでしょうか。~


~私が初めて教務主任になった時、私が所属していた学校は日本語教育振興協会(以下 日振協)に所属していたので、日振協が主催する「新任教務主任教育研修会」という合宿形式の研修会があり、代々木のオリンピックセンターに2泊3日でカンヅメにされ、しごかれたのを覚えています。

 しかし昨今、日本語学校として許可されても、この日振協に加盟する学校は激減しています。もちろん最近は日振協さんも考えてくださり、多めに参加費を払えば、ほとんどのイベントに日振協加盟校でなくても参加できるようにしてくださっています。

 でもそれは全て任意。「そんなもん、行かなくても教務主任ぐらい適当にやればいい。」という考えの学校や上司(多くは現場を知らない上司やワンマンな経営者)の元で働く新任教務主任も多々いるはず。

つまり・・・、


留学生に関しては素人の経営者や校長の増加 → 未曾有の教師不足 → なんちゃって教務主任の増加 → 教務主任の教育は誰がするのか? → なんちゃって教務主任の下で育つのは、なんちゃって日本語教師 → 教育の質の低下


という事が懸念されるわけです。~


 そして、もしこのような学校ばかりが増えると、日本語学校への日本留学のイメージダウンにつながり、高等教育機関の渡日前入試が増え、「日本語学校は必要か?」という議論に繋がってくるのでは?と言うのは杞憂でしょうか?


 しかも新設校立ち上げの時には、いろいろ検査がうるさかった入国管理局も、立ち上げ後はいちいち検査している暇なんかなくて、お構いなしらしいし、ましてや教育内容については、文科省もどこもなんの調査もしない。部屋の広さと机椅子の数が確保できて、教師と学生の人数さえ守っていれば、そこで教科書読んでるだけでも「日本語教育」が成立し、出願書類の書き方を教えるだけという、お粗末な「進路指導」が誕生する。


 こうなってくると学生は、高いお金を出して日本に来るメリットあるんでしょうかね?


 以上の事から、私の結論。


○いまや、質のいい教育、良心的な進路指導を行えている学校は少数派になってきた。

                      

○中には、他の学校と関わらないため、自分の学校の質がどうなのかを客観的に判断できない、麻痺状態の井の中の蛙的教務主任や専任講師も増えている。


○そしてそんな学校に何も知らないで雇われた非常勤講師は、育てられる事もなく、成長する事もなく、何年も無駄に費やす事になる。


○無駄に費やすだけならまだいい。頭おかしい教務主任や専任講師に精神的に追い詰められ、心を病んで社会人をリタイアする、残念な例も最近よく聞く。(たぶん増加傾向。実力のない上司ほど理論に裏打ちされてない無駄吠えをギャンギャンして、現場を混乱させますから。学校の教師の質が薄まると、学生にとって迷惑なだけでなく、非常勤講師にとってもこういう害のある上司が増えます。)


○いい学校、いい教師は情報収集して、いい情報を集めて、いい教育を行っている学校同士集まって、さらに多くの“いい情報”を集め、粗悪学校と差別化を図ろう。


○そして粗悪学校は淘汰されていけばいい。


これが私の理想。


ところであなたの学校の「質」、薄まってませんか?


~・~・~・~・~・~・~・~・~・


ここで一つお知らせが。


いい学校の有志の教師で集まって行っている、LT会という研究会があります。

学校に所属していない、一般の方も参加できます。

今度は5月28日(土)に、東京の高井戸で開催されます。

一人5分の発表で、日本語学校の現場で日々奮闘している教師が、現場から拾ったネタをもとに研究報告、発表しますので、モロ現場の意見、現場の目線。

しかも各発表の後に、FBの用紙を全員が書きますので、発表者はいろいろなFBを聞けて勉強になるし、FBを書く方もcriticする力がかなり鍛えられます。

何よりいろいろな学校の取り組みが見えて、とても面白いです。


以下に詳細を載せますので、参加ご希望の方は、直接主催者にお申し込みください。

*開催日が迫っていますので、お申し込みはなるべく早くお願いいたします。

(主催者は東京三立学院の及川先生です)



「日本語教員 LT会」
恒例のLT会ももう第7回を迎えます。
はじめての方もリピーターも、そして発表者も大募集中です!

開催日時:5月28日(土)
     10:30~16:30(予定)
場  所:杉並区立高井戸区民センター
     第1・2集会室
※いつものオリンピックセンターが満室につき、今回は別会場です。
新宿から京王線で明大前乗り換え、井の頭線高井戸駅徒歩1分。
新宿から約15分で乗り換えもありますが、小田急で参宮橋まで行ってオリンピックセンターまで歩くのと比べて、さほど変わりません。
渋谷からなら1本、吉祥寺からも便利です。
荻窪からのバスも便利です。

こちらの申し込みは及川まで。
oikawa@tokyo-sanritsu.jp



尚、このメールで参加申し込みをするときに「詳細のPDFも添付して下さい」と請求してください。(このブログに貼り付ける事ができませんでした。すみません。)

前回は、このブログを見て、ご参加お申し込み頂いた方が何名かいらっしゃいました。

お会いできて、とてもうれしかったです。

今回も前回お会いできた方との再会、そして新たな方とお会いできるのを楽しみに致しております。


当日お会いしましょう。