経済データ分析

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豊富な経済指標を一元化し、詳細に分析の上グラフ化して、マクロ経済の流れをわかりやすくまとめます。
会社経営・資産運用の判断材料に、ニュースの報道内容の検証にご活用頂ければ幸いです。

【内容】 マクロ経済に関する経済指標を集約・一元化して、分析・報告

      日・米・欧・中等について、金融・物価・雇用・消費・投資等の経済指標を収集・分析

【目的】 1.経済指標の集約・一元化→情報収集の効率化

       以下サイトを見れば、マクロ経済把握に必要な情報が入手でき、収集の手間が省ける。

         経済指標一覧 http://ameblo.jp/mdfrt309824/
      2.経済指標の分析・報告→マクロ経済の動向の把握

       集約した経済指標の分析結果から、現状の傾向・水準、今後見通しがわかる。

【特徴】 1.客観性  経済指標というデータ=事実に基づき分析するため、内容に客観性がある

      2.高精度  指標の数が豊富(未掲載含め100前後)ゆえ、分析に偏りなく精度が高い

      3.分析力  大手銀行・コンサルティングファームでの分析で培ったデータ分析力を活用

      4.視覚化  分析結果を表・グラフ化=”見える化”しており、一目でわかる
【効果】
1.【目的】記載の通り情報収集の効率化・マクロ経済の動向の把握に役立つ。

     2.それにより会社経営・投資・ニュース視聴の際の判断材料を入手できる。

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以下は、FRBによる金融緩和で、企業の生産活動が活発になることを示したものである。

FRBがお金を増やすと、個人消費や住宅投資、企業の設備投資が活発になる。

それぞれのプロセスは、前回までの記事で見た通りである。

そうなると、要は需要が増えるので、企業も生産を増やす必要が出て来る。

実際、上記のグラフの通り、マネタリーベースの増加に伴い、鉱工業生産指数も上昇している

ちなみに、両者の相関係数は0.962と、極めて高い


このように、金融緩和は消費、投資、生産といった実体経済に、強い影響を及ぼす

だからこそ、実体経済の悪化を防ぎ、上向かせるためにも、最初のきっかけとして金融緩和は有効であると言える。

一方で、一度始めたそれをいつ縮小しやめるかも、実体経済に影響するので極めて重要である。



ちなみに、以下のグラフは、鉱工業生産指数に関する日本とアメリカの比較である。

1980年を起点として、2013年までの長期間で見ている。

この期間の平均で、アメリカは2.0%で増加したが、日本は1.2%の増加にとどまっている。

また個別の時期で見ても、リーマンショックを含めて不況の時には、アメリカよりも日本の方が大きく落ち込んでいる。

その結果、80年比で見て、アメリカは1.98倍にまで上昇したが、日本は1.37倍にとどまっている。

つまり、アメリカよりも日本の方が、企業の生産活動は停滞気味で、不況の時は大きく落ち込む傾向にある

長年続いてきたデフレも影響しているのか、経営環境が悪い時の萎縮度合いが、それだけ大きいと言える。

以下のグラフは、FRBがお金を増やすと、住宅投資が増えることを示している。

平たく言うと、FRBがきっかけをつくって世の中にお金が出回るようになると、個人が住宅をだんだん買うようになっていく、ということである。

これは、以下の流れで起こっていると考えられる。

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FRBが、米国債やMBSを買うことを通じてお金を増やすと、お金の価値が下がる。

すると、以下のようになる。

・FRBが米国債を買うので、国債の価格が上昇し、利回り(名目金利)が低位推移する(※)。

 ※10年国債利回りの平均値は、上記の量的緩和「拡大」期間で2.21%、「縮小」期間でも2.55%にとどまっている。

・一方で、価値の下がったお金を持つより、それを手放してモノを買おうと言う動きが出て来る。それを予想して、予想インフレ率が上昇する

・その結果、予想実質金利(=名目金利-予想インフレ率)が低下する。

これにより、個人が銀行から住宅ローンとしてお金を借りる際に、借入金利が下がるだろうということになり、お金を借りやすくなる

その結果、実際にお金を借りて住宅を購入するようになっていく

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こうして、上記グラフの通り、量的緩和に伴って、住宅投資も増えていった

マネタリーベースと住宅着工件数の相関係数は0.739であり、雇用、個人所得、個人消費ほどではないが、やはり高い


前回の記事で、FRBがお金を増やすと、予想実質金利が下がり、企業がお金を借りやすくなり、設備投資が増えていく、ということを述べた。

基本的には同じことであり、「企業」が「個人」に、「設備」が「住宅」に、それぞれ変わっただけである。

そのせいか、マネタリーベースとの相関係数も、製造業新規受注額は0.721、住宅着工件数は0.739と、それぞれ0.7程度であり、ほぼ同じである。


アメリカの場合、日本と異なり、人生のうちで何度か住宅を買い替えるようである。

そのため、住宅関連の指標については、新築の住宅着工件数や販売件数よりも、中古の販売件数の方が、たしかに重要ではある。

しかし、中古物件が出回る前提としては、当然新築物件が増えるかどうかが重要である。

その意味では、この住宅投資が増えることには、やはり意味がある。


住宅投資が増えれば、当然、住宅関連産業が儲かる

具体的には、住宅建設業、建設資材製造・販売業、住宅設備製造業(エアコン、家具・インテリア、厨房器具、窓・サッシその他)、住宅金融業(住宅ローンの提供など)である。

これらの各企業が儲かることで、その企業は雇用や賃金を増やす必要と余裕が出て来る。

そうして、個人の収入が増えていき、モノを買おうという意欲と余裕が高まっていく。

こうした好循環が出来上がっていって、国家全体の経済成長につながっていく


ということで、FRBがお金を増やして、住宅投資も増やしていくことが、極めて重要である

以下のグラフは、FRBがお金を増やすと、製造業の設備投資も増加することを示したものである。



これは以下の流れによる。

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FRBが、米国債やMBSを買うことを通じてお金を増やすと、お金の価値が下がる。

すると、以下のようになる。

・FRBが米国債を買うので、国債の価格が上昇し、利回り(名目金利)が低位推移する(※)。

 ※10年国債利回りの平均値は、上記の量的緩和「拡大」期間で2.21%、「縮小」期間でも2.55%にとどまっている。

・一方で、価値の下がったお金を持つより、それを手放してモノを買おうと言う動きが出て来る。それを予想して、予想インフレ率が上昇する

・その結果、予想実質金利(=名目金利-予想インフレ率)が低下する。

これにより、企業が今後支払う金利が実質的に下がるだろうということになり、設備投資しやすくなる

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こうして、上記グラフの通り、量的緩和に伴って、設備投資も増えていった

マネタリーベースと製造業新規受注額の相関係数は0.721であり、雇用、個人所得、個人消費ほどではないが、やはり高い


企業の設備投資が増えれば、受注業者の売上が増加し、その業者は雇用や賃金を増やしていく。

また発注業者もその設備を使って製品を生産し、(前回までの記事でも見た通り、増えている)個人消費に対応する。そうして売上が増えて、やはり雇用や賃金を増やしていく。

こうして、アメリカ全体で見て、国民の雇用や賃金が増えていき、景気の回復につながっていく


改めて、FRBがお金を増やすことで、企業の設備投資が増えるのであり、それがいかに重要かがわかる。

前回の記事で、FRBがお金を増やすと、小売売上高が増えることを示した。

以下は、FRBがお金を増やすと、個人消費支出が増えることを示している。

これは、個人消費について、前者が企業側から見ているのに対し、後者が消費者側から見ているという違いである。

このように見る側の違いだけで、いずれにせよ、お金を増やせば、増えたお金でモノを買うようになり、個人消費が増えていく、という点では同じである。

よって、詳細は前回の記事に譲り、詳細は省く。



以下のグラフは、FRBがお金を増やすと、小売売上高も増えることを示したものである。

つまり、FRBがお金を増やすことで、アメリカ全体の個人消費が増えることを意味する。


これは、かなり簡略化すると、以下のようなプロセスで生じると考えられる。

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FRBがお金を増やすと、お金の価値が下がる。

すると、価値の下がったお金を手放し、以下のような流れが出て来る。

・そのお金で株などを買う。それにより株高となり、売却(すれば利)益が得られる。それでモノを買う

・そのお金で、株などではなく直接モノを買う

こうしてモノが売れるので、小売売上高は増加する

さらにこうして小売業は売上が増えるので、雇用や従業員の給料を増やす。

その結果、個人は所得が増えて、さらにモノを買う余裕が出て来る。

こうした好循環が続いていって、小売売上高はさらに増加していく

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実際、12年1月から14年11月について、マネタリーベースと小売売上高の相関係数を見ると、0.933と極めて高い数値が出ている。

金融緩和が個人消費に強い影響を及ぼしていると言ってよい。



参考までに、以下は小売業の中の各業種ごとのデータである。

小売業は、上記主要業種(赤の網掛け部分)を中心に、好調な業績が続いている

そして、その小売業には、約15百万人(1割程度)の雇用者がおり、ほか業種よりも比較的多い

よって、小売業の業績が好調なことは、雇用者の増加と言う点でも極めて重要な意味を持つ


金融緩和で消費を促し、雇用者を増やしていくことが重要であり、それを着実に実現してきたことがよくわかる。

前回までの記事で、FRBがお金を増やすと、雇用者数が増えて、失業者が減り、失業率が改善することを述べた。

今回の以下のグラフは、FRBがお金を増やすと、個人所得も増える、ということを示している。

そのプロセスは、雇用の改善と基本的に同じなので、やはり省略する。


ただし、1点だけ注目しておくことがある。

個人所得の増加度合いについて、12年9月から13年12月の量的緩和「拡大」時期は1.038倍となったが、14年1月から10月の「縮小」時期は1.039倍と若干上がっている。

つまり、お金を増やす度合いを押さえているのに、個人所得はより増えているのである。


これは、以下のような経済の流れによると考えられる。

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お金が増えることで、モノを買う動きが出てきて、企業の売上が増えていく。

すると、企業はまず(非正規を中心に)雇用を増やし、その需要に対応しようとする。

その状況がしばらく続くと、人手不足がより強まって、人材確保のために賃上げをする必要が出て来る。

また売上も増加していくので、賃上げをする余裕も出て来る。

こうして、残業代やボーナスなどだけでなく、基本給の部分でもアップするようになる。

そのため、まず雇用が改善し、次に個人所得が増加する、という順番になる。

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このような流れであるので、量的緩和が縮小に入った後でも、個人所得の増加ペースが若干上がっている、と考えられる。


いずれにせよ、FRBがお金を増やすと、雇用に遅れて個人所得も増加することがわかる。

金融緩和は、一定期間はかかるものの、国民にとって確実にプラスになるのである。

以下のグラフは、FRBがお金を増やすと、雇用者数(非農業部門)も増えることを示したものである。

前回、FRBがお金を増やすと、失業率が改善する、ということを述べた。

それと合わせると、FRBがお金を増やすと、雇用者数が増えて、失業者が減り、失業率が改善する、という当たり前のことである。

ということで、そのプロセスは前回述べたこととほぼ同じなので、今回は省略する。




参考までに、雇用者数(非農業部門)の増減について、内訳を以下に示しておく。

直近の11月で見ると、非農業部門全体で、雇用者数は140百万人である。

このうち、民間部門で118百万人(84.3%)を占め、その中でもサービス部門で98百万人(70.6%)である。

さらに細かく見ると、教育・健康、専門職、小売、レジャー・接客で71百万人(51.1%)である。

つまり、アメリカの労働市場は、「政府」「民間の製造等」は3割しかなく、「民間のサービス」が7割を占める、ということである。

アメリカは民間のサービス業で成り立っており、これらの雇用がいかに増えるかが極めて重要である。


そこで14年1~11月の増減数を見ると、全体の5割を占める4業種(赤で網掛けした部分)は、ほとんど毎月増加が続いており、堅調と言える。

このことからも、現在のアメリカ経済の堅調さが伺える



Ⅰ.はじめに

金融緩和が雇用の改善につながることは、日本の場合の分析でも見た通りである。

同じことがアメリカでも言えるということが、以下のグラフでわかる。

つまり、FRBがお金を増やすと、失業率は改善している、ということである。



Ⅱ.分析

1.12年8月まで

リーマンショックから立ち直るために、アメリカは量的緩和を2回行って来た。

しかし、失業率は高止まりしており、12年8月の時点で8.1%もあった。


2.12年9月~13年12月

そこで、FRBは3回目の量的緩和を実施し、毎月850億ドル(米国債450億ドル+MBS400億ドルの買取りによる)増やすことにした。

つまり、毎月850億ドル×16か月(12年9月~13年12月)=1兆3600億ドルの増加予定だった。

それに対し、3兆6850億ドル(13年12月)-2兆6690億ドル(12年8月)=1兆160億ドルの増加となった

若干の差はあるが、1兆ドルを超えて1.4倍にまで増やしたと言う点では、計画に沿った大規模な金融緩和だったと言える。

その結果、失業率は改善し、8.1%から6.7%へと、1.4ポイント低下した。


日本の分析でも述べたが、金融緩和が失業率の改善につながるプロセスは、以下の通りである。

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FRBが米国債等を買い取って通貨を増やすと、通貨の価値が下がる。

すると、人々は、価値の下がった通貨を手離し、モノを買おうと言う方向に動く。

FRBが米国債を買い取り続けるので、10年国債利回り(長期金利)=名目金利は上昇しにくい。

一方で、人々が将来モノを買おうと言う方向に動くので、予想インフレ率は上昇する。

その結果、実質金利(=名目金利-予想インフレ率)は低下する。

そうなると、企業は設備投資しやすくなる。

また、実際にモノを買う動きも増えてきて、個人消費が伸びていく。

さらに、通貨の価値が下がっているので、ドル安になり、輸出にもプラスとなる。

こうして、設備投資、個人消費、輸出が伸びていき、企業の業績は向上し、雇用を増やす余裕が出て来る。

またそうした需要に応えるためにも、雇用を確保する必要が出て来る。

その結果、雇用者数は増加し、失業率は低下していく。

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ちなみに、マネタリーベースの実額と失業率とは、相関係数が-0.959であり(12年1月~14年11月)、負の相関関係が極めて強い。

つまり、FRBが通貨を増やせば増やすほど、失業率は低下していく、ということである。


3.14年1月~14年10月

こうして、失業率が低下し(コアCPIのインフレ率も13年12月で1.7%と安定し)てきたこともあり、FRBは量的緩和を縮小(緩和逓減:テーパリング)していくことにした。

つまり、米国債やMBSを買い取る額を徐々に減らしていき、10月には終了することにしたのである。

上記の期間は、マネタリーベースは平均2.1%のペースで増加し、1.4倍に増えた。

しかしこの期間は、平均0.9%の増加にペースダウンし、1.1倍の増加にとどまった。

その結果、失業率の低下ペースも、1.4ポイントから0.9ポイントへとダウンした。

それでも、14年10月時点で、5.8%にまで低下した。

これは80年以降で最も低かった00年の4.0%にはまだ届かないが、それでも10%台だったリーマンショック後に比べれば、大幅に改善したことになる。

このように、ペースダウンはしても量的緩和自体は継続したので、それに伴い失業率も引き続き改善していったのである。



Ⅲ.まとめ

日本もアメリカも関係なく、中央銀行がお金を増やせば、極めて高い確率で、雇用も改善する、ということが改めてわかる。

当然一定期間はかかるし、不安定な雇用から改善していくので、「金融緩和をしても効果はない」といった批判を受けやすい。

それでも、裏を返せば、一定期間かければ極めて高い確率で効果はある、ということである。

半径5メートルの範囲で、2~3カ月の短期間だけを見て、全体のことを判断してはならない。

以下のグラフは、2014年7~9月期の実質経済成長率(実質GDP増減率)について、年率換算の寄与度を表したグラフである。



実質GDP全体の中で、個人消費(58.6%)と設備投資(13.6%)で72.2%と、約7割を占める。

つまり、家計がモノを買い、企業が設備投資をしなければ、経済成長はできない、ということである。



実際、金融緩和拡大と財政出動が始まってから、2013年4~6月期と7~9月期は、個人消費と設備投資を中心に民需が拡大し、3.0%、1.6%とプラス成長が続いていた。


ところが、2014年4月から、金融緩和の拡大ペースが落ち、消費税率8%への引上げが決まってしまった

これは、上記のデフレ脱却・景気回復に向けた政策とは逆方向である。

そのため、2014年1~3月期には、特に消費増税前の駆け込み需要で5.8%も成長したが、4~6月期はその反動で-6.7%と大幅なマイナス成長に落ち込んだ。

結局その影響は大きく、7~9月期になっても-1.9%と、マイナスのままである。


今後は、追加の金融緩和とさらなる消費増税延期により、大幅なマイナスにはならず、徐々に回復に向かうかもしれない。

しかし、諸外国との比較で考えても、「実質経済成長率2.0%+インフレ率1.0~3.0%=名目経済成長率3.0~5.0%」は求められるべきである。

そのレベルにまでなるには、まだ時間がかかるだろう。



いずれにせよ、金融緩和や減税・給付金支給など様々な形で、比重の大きい個人消費と設備投資を刺激し、マイナスの需給ギャップを埋めていき、上記のレベルになるようにしていく必要がある。

Ⅰ.はじめに

お金をきちんと増やせば物価が上昇し、その逆もまたしかり

このシンプルなことが、以下のグラフから改めてわかる。


使用するデータは以下の通り。

マネタリーベース:日銀

消費者物価指数(総合=食品・エネルギーを含む):総務省

企業物価指数:日銀

企業向けサービス価格指数:日銀


消費者物価指数については、天候や市況等の影響を受けやすい食品とエネルギーは、本来除いて見るべきである(日本で言うコアコアCPI、諸外国で言うコアCPIで見るべき)。

しかし、企業物価指数が農産物やエネルギー関連製品も含んでいるため、消費者物価指数もそれらを含む総合で見ている。



Ⅱ.これまでの経過

1.13年4月~14年3月

13年4月以降、日銀は大胆な金融緩和を開始した、つまりお金を増やす政策を始めた。

お金が増えると、お金の価値が下がり、価値の下がったお金を持つよりモノを買う動きがいずれ出て来る。

それが現実になるにつれて、物価は上昇していく。

実際に、上のグラフの通り、3つの指数いずれも上昇していっている


ただしそれでも、14年3月時点では、消費者物価指数は1.6%であり、変動の激しい食品・エネルギーを含むベースですら、目標の2.0%には満たないレベルであった。


2.14年4月~

(1)消費者物価指数

それなのに、14年4月以降、日銀は金融緩和のペースをやや落とし、政府は消費税率の8.0%への引上げを決めてしまった。

つまり、世の中全体に出回るお金をあまり増やさず、家計が自由に使えるお金も減らしてしまったのである。

そうなると当然、お金の価値は上がってしまい、お金を貯め込み、モノを買わなくなっていく。

それに加えて、夏場以降は原油価格も下落し始めた。

その結果、消費者物価指数は低迷し始め、11月には0.4%にまで落ち込んだ

このままいくとマイナスになり、デフレに逆戻りしかねない。


(2)企業物価指数

企業と個人のモノの取引の影響をある程度受けながら、企業間のモノの取引も行われる。

そのため、消費者物価指数が低迷し始めれば、企業物価指数も低迷し始める。

つまり、上記の要因が企業間にも影響して、企業物価指数も低迷し始め、11月には-0.2%とマイナスにまで落ち込んだ

企業間の場合は特に、原油価格の下落の影響が強いと考えられる。


(3)企業向けサービス価格指数

企業と個人のサービスの取引も、企業間のサービスの取引に影響を与える、と一応は言える。

ただしサービスの場合、モノと違って買い貯めできないので、ある程度継続して取引が発生し、価格も徐々に上がっていく。

また当然原油という「モノ」の取引ではないため、原油価格の下落の影響を直接的には受けにくい。

そのため、企業向けサービス価格指数は、一貫して上昇し続けている


(4)まとめ

以上をふまえると、お金を減らすと、特にモノの取引が停滞し始め、物価は低迷していく、ということがわかる。原油価格の下落はそれに拍車をかけている、ということである。



Ⅲ.今後の見通し

日銀は10月末に追加の金融緩和を決め、政府も消費税率10.0%への引上げは延期の方針である。

つまり、世の中全体に出回るお金を再び増やし、家計が使えるお金を奪わないようにしよう、ということである。

そうなると、時間はかかるが、再び物価は上昇していくだろう

ただし、これまで政府や日銀に裏切られてきた国民の不信感は根強く、また原油価格下落が続く可能性もあり、文字通りかなり「時間がかかる」恐れがある