以下のグラフは、FRBがお金を増やすと、住宅投資が増えることを示している。
平たく言うと、FRBがきっかけをつくって世の中にお金が出回るようになると、個人が住宅をだんだん買うようになっていく、ということである。
これは、以下の流れで起こっていると考えられる。
--------------------------------------------------------------------------------------
FRBが、米国債やMBSを買うことを通じてお金を増やすと、お金の価値が下がる。
すると、以下のようになる。
・FRBが米国債を買うので、国債の価格が上昇し、利回り(名目金利)が低位推移する(※)。
※10年国債利回りの平均値は、上記の量的緩和「拡大」期間で2.21%、「縮小」期間でも2.55%にとどまっている。
・一方で、価値の下がったお金を持つより、それを手放してモノを買おうと言う動きが出て来る。それを予想して、予想インフレ率が上昇する。
・その結果、予想実質金利(=名目金利-予想インフレ率)が低下する。
これにより、個人が銀行から住宅ローンとしてお金を借りる際に、借入金利が下がるだろうということになり、お金を借りやすくなる。
その結果、実際にお金を借りて住宅を購入するようになっていく。
--------------------------------------------------------------------------------------
こうして、上記グラフの通り、量的緩和に伴って、住宅投資も増えていった。
マネタリーベースと住宅着工件数の相関係数は0.739であり、雇用、個人所得、個人消費ほどではないが、やはり高い。
前回の記事で、FRBがお金を増やすと、予想実質金利が下がり、企業がお金を借りやすくなり、設備投資が増えていく、ということを述べた。
基本的には同じことであり、「企業」が「個人」に、「設備」が「住宅」に、それぞれ変わっただけである。
そのせいか、マネタリーベースとの相関係数も、製造業新規受注額は0.721、住宅着工件数は0.739と、それぞれ0.7程度であり、ほぼ同じである。
アメリカの場合、日本と異なり、人生のうちで何度か住宅を買い替えるようである。
そのため、住宅関連の指標については、新築の住宅着工件数や販売件数よりも、中古の販売件数の方が、たしかに重要ではある。
しかし、中古物件が出回る前提としては、当然新築物件が増えるかどうかが重要である。
その意味では、この住宅投資が増えることには、やはり意味がある。
住宅投資が増えれば、当然、住宅関連産業が儲かる。
具体的には、住宅建設業、建設資材製造・販売業、住宅設備製造業(エアコン、家具・インテリア、厨房器具、窓・サッシその他)、住宅金融業(住宅ローンの提供など)である。
これらの各企業が儲かることで、その企業は雇用や賃金を増やす必要と余裕が出て来る。
そうして、個人の収入が増えていき、モノを買おうという意欲と余裕が高まっていく。
こうした好循環が出来上がっていって、国家全体の経済成長につながっていく。
ということで、FRBがお金を増やして、住宅投資も増やしていくことが、極めて重要である。