—昼下がりの午後三時。私はルノアールへやって来る。帰巣本能?いいや、私は暇なのである—
只今、絶賛ハマり中。
小説で、DVDで、ダブルで楽しんでいる【去年ルノアールで】は、こんな冒頭から始まる。
毎日『喫茶室ルノアール』へ通いいろんなことを妄想する「私」と、そこに集う人たちの奇想天外な出来事。
ごく普通の喫茶店。
しかし、この内容が無気力で実に面白い。
著者でありこの主人公である「私」は、尊敬する文筆家・せきしろ氏。
彼が実際にルノアールで出会った、妄想した、そんな毎日を綴る日記みたいなものだ。
同じく妄想街道を生きるあたしにとっては、光にさえ思える作品なのだ。
小説は何回読んでも面白いし、DVDを何度見ても飽きない。
「私」を演じるのは、星野源。
ワタクシ、只今イチオシのアジメン。
現在の「会ってみたい人」ナンバーワン。
平和な顔から繰り出される妄想百面相はまさに芸術。
癒しから変態まで、天才的に器用にこなす。
『ジョン・レノン&オノ・ヨーコ』を題材にしたストーリーがあるのだが、「ヨーコ、ヨーコ」と連呼された時は嬉しくてニヤニヤと照れてしまった(←アホ)
中でもお気に入りのストーリーが「ルノアールに軍手が落ちている」というもの。
軍手はどこにでも落ちている。
もしかしたらそれは軍手メーカーの策略で。
知名度を上げ、あわよくば売り上げをも上げようということが会議で議論され。
サブリミナル効果を期待して、わざと軍手をいろんな箇所にばら蒔いているのではないか?
そんな妄想からスタートし、軍手を何気なく蹴って、他の客や店員と妄想サッカーを始めるというストーリー。
「喫茶店に軍手?」
という、似つかわしくないものを逆手に取って楽しんでしまう素晴らしい話なのだ。
それを見た翌日。
あたしは昼食を取るためにモスバーガーにいた。
去年出来たところの、新しくてオシャレなモス。
平日の昼前で、まだ人はまばら。
優雅に一人がけソファに座っていた。
ふと足元を見ると、まぁるい、いや、ラグビーボール型の茶色い何かが落ちている。
よく見ると、それはどんぐりだった。
しかも、二つ。
なにゆえ?
間髪入れずに、昨日の「軍手」のストーリーが頭を駆け巡った。
ルノアールには軍手。
モスバーガーにはどんぐり。
妄想の神様が降りてきた。
きっとこれは、トトロが置いて行ったのだ。
都会(神戸の端くれでも一応都会)の子供たちに、自分の存在を知らせに来たのだ。
ゲームばかりする子供たちに、夢を与えに来たのだ。
あたしが座っているこの席は、数分前までトトロが優雅に座っていて、以前あたしが食べるのに苦労した『金のてりたま』を一口で食べたに違いない。
きっとその横には中トトロと小トトロがいて、真似して食べて、口の回りをベチャベチャにしたに違いない。
食べるのに夢中で、その時にどんぐりを落としたのだ~!
なんてオシャンティーなトトロ。
なんて可愛いチビ二人。
想像しただけで口角が上がるではないか。
しかし、残念だったな!
子供ではなく、大人になっても妄想ばかりする夢見る夢子が後にその席に座るとは。
そしてその大人が、二つのどんぐりを見つけてこんなにも妄想ワールドに入り込むとは。
さぞ、計算違いだったろう。
そんなあたしを、彼らは近くで見ていたに違いない。
しかし彼らはきっと満足なのだ。
自分の落としたどんぐりで、こんなにも妄想する人間を見て、幸せなのだ。
意外なところに意外なものが落ちているという現象は、世の妄想族のためにある。
最近、ペンケースやパスケースなど、持ち物のいろんな意外な場所から人工芝が出てくる。
これはメルヘンな妄想なんかには繋がらない、ただのフットサルの残り香である。
