お通夜の日・・

まず最初に説明しとくと、

私達の生家は離れ小島である。

家はかろうじて(そこに)あったであろう形跡を留めてはいるが、

今や狸の住処である。

ねぇちゃんの旦那さんが、畑仕事に精を出しに通ってくれている。

島の墓は、墓じまいをし、こちら(ねぇちゃんや弟が住まいする市)に移した。

じぃちゃん、ばぁちゃんのときは未だ島の墓だった。

おっちゃん(母の弟)の時は、こちらの墓だった。

母もこちらの墓に入るのだが、お寺さんはずっと馴染みの島のご住職にお願いしている。

ねぇちゃんも私もこのご住職が好きである。

ご住職の話は、心の奥根に染み込むように入って来る。。

ご住職がおっしゃった・・

「(おかぁちゃんの戒名について)色々考えましたが、お父様、お母様から(じぃちゃん、ばぁちゃん)一字づつとって・・」と。

そこには、じぃちゃんの名とばぁちゃんの名が確かに書かれてあった。何気に感動した。。

ご住職は知らないだろうが、早くにじぃちゃん、ばぁちゃんの元を飛び出した母。が、、一番じぃちゃん、ばぁちゃんの手を煩わせ、悩みの元であったであろう母。だからこその二人の名前を貰った戒名。

おかぁちゃん、最後は何とかなるもんやな。。

 

話を戻そう。。

弟に聞いた、盛りカゴとか花とか(胡蝶蘭は別である)何かしようか?と。

「要らない」と言う。ま、そうじゃろうな。。

だが、蓋を開けてみれば・・

あちら筋(嫁女の筋)からは盛りカゴあったがな。。なんじゃい!

直属の筋である私らが何もせんって・・と、世間様は思っとるで。

その中でも一際存在感を示していたのは、胡蝶蘭じゃったわ。

ザマァ見ろ。

そして、帰り際、、手渡された(昨夜、弟が言ってた弁当な)弁当。。

ホンマに普通の弁当屋の弁当やったわ。鮭弁やったわ。

「弁当を用意しとる・・」と言いつつも、私は仕出し屋のあの白と紫のゴムの掛かった、ブルーのビニールの風呂敷で包まれた、

あの弁当を思ってた。。

正真正銘、弁当屋の鮭弁やったわ。

弟よ、そう言う所よ。。あんた、世間様と言うものをもっと学ばんといかんで。。

まぁ、ええけど。。

今夜もおかぁちゃん、一人で寝かされるんかな?

この期に及んで未だ現れない弟一号。

おかぁちゃん、寂しいかも知れんけど、それもあんたが送ってきた人生やで。。

納棺の儀・・

葬儀会館の人も納棺師も突っ込みどころは多々あったが・・

まぁ、ええわ。。

納棺は、私、弟夫婦で立ち会った。

何でも順番は、弟、嫁女、私。

まぁ、ええわ。。

末期の水・・

弟よ、、どんだけ飲ませんねん?

湿らす程度でええねんで。頬を伝って滴っとるがな。

まぁ、ええわ。。

後で弟曰う、「何でも専門用語で来るけぇな、意味が分からんねん。何のことじゃろ・・って」

納棺の儀とか、末期の水とか普段使わんからな、、

にしても、解るじゃろうが!?

「納棺って、焼くときの(火葬)あれかと思っとたわ」

弟よ、どんだけポンコツやねん?

まぁ、ええわ。。

 

私はねぇちゃんと相談して(と、言うか、私が勝手に決めたんやが)

おかぁちゃんに胡蝶蘭を手向けようと探していた。

「おかぁさん、花好きじゃったけぇなぁ・・喜ぶわ」と、取って付けたように嫁女。

棺に一緒に入れてあげる物の話になった時、

「カラオケの衣装を着せてあげようと思って、、おねぇさん、一緒に選びに(家に)来る?」

誰にものを言うとんじゃい!?嫁女、そこは、

「一緒に見て貰える?」とか、お願いとプチ敬語でものを言え!

何で上から目線?

まぁ、ええわ。。行かんかったけどな。

「焼き芋が食べたい・・って、言うとったけど、芋は食べたらイカンかったけぇ、焼き芋入れてやってな」と、私。

「わかった、そうじゃな。(生の)芋を入れといたらえぇん?」

嫁女、何言うとんねん!?

それって、(生の)芋入れといたらおかぁちゃんと一緒に焼き上がって焼き芋になるってか??

M1にでも出るんですかい?ボケツッコミですかい?

まぁ、ええわ。。

そして、今夜もおかぁちゃん、一人で寝かされる。。

誰も寝ずの番はせず。。

 

この夜、弟から電話があった。

「明日、(通夜の日)弁当を用意しとるけぇ。(ねぇちゃんにも)言うとって」と。

通夜は夕方5時から。

終わった後、皆で集まらん代わりに弁当を持ち帰って貰おうと思って・・と、言うことやな。

実は、前日潮見表を手に入れた。

人は引き潮に乗って旅立つと言う。

じぃちゃんは、潮止まりで引き出して直ぐだった、

ばぁちゃんは引き潮に乗って行った、

後で潮見表を見てみれば・・

おかぁちゃん、満ち潮真っ只中じゃんか。。

皆が皆(引き潮で)そうじゃなかろ?と、言われればそうなんだけど・・

「待ったところで何か食べられる訳でもなし、もうええわ。好きなようにするわ、あばよ!」

てな感じじゃな。あんたらしいわ。

さて、

病院を出て「自宅に帰る準備」←敢えて「」で囲んだ。。

諸々せねばなりません。

入院中は私がやる、の約束通り、ここからは弟にバトンタッチと相成ります。

葬儀の手配やお寺さんへの連絡などやっております・・

そこで「??」が勃発、弟の電話での会話を聞けば・・早すぎるがな。お通夜から葬儀から全部1日早いがな。

弟よ、24時間は空けんといかんのやで。。(この件に関してはお寺さんの助言で事なきを得る)

さぁ、おかぁちゃん、家にかえろうか。。

えぇぇ~!!??葬儀会館に直行ですかい?

ま、ええけど。。

葬儀会館の人に聞かれました、「今日は誰か泊まってですか?」

「いえ・・」と、弟。

怪訝そうな雰囲気を醸し出す葬儀会館の人。

「もし、お泊まりでしたらあちらの部屋にお布団とかございますので」と、一応説明してくれる葬儀会館の人。

一応聞いてみた、「何で(家に)帰らんの?」と。

「近所の人が何かと五月蠅いんよ、霊柩車が家に来たりしたら、近所の人が気持ち悪がるし」だと。

えぇぇぇ~~~~!!!何それ。

霊柩車が来ると近所の人が気持ち悪がる?

じゃぁ、何ですかい?近所の人は不老不死ですかい?

あんたら、霊柩車には絶対乗らんのですな?

人が居るべき場所に帰る事がそんなに不浄ですかい?

弟よ、それは、あんたの世間様との付き合いや関わりに問題があるんじゃないかえ?

ま、ええけど。。

そして、おかぁちゃん、ひとりぼっちで夜を明かす。