産婦人科のクラークをしていた頃のお話。
不妊治療に研究熱心なドクターでしたので
みなさん熱心に通院されていました。
産婦人科にいるころは
お外で患者さんにあっても
気が付かないふりをするんですよね。
プライバシーもありますし、
特に出産以外で産婦人科に出入りすることは
なんとなく、恥ずかしいという意識をお持ちの
方も多いからです。
でも、個人的には産婦人科の患者さんが
当時私は一番スキでした。
どんな理由での通院にしろ、年齢関係なく
皆さんご自分の体を大切に大切に
しておられるな、というのが感じられたからです。
婦人科の病気には色々ありますが
皆さん、純粋で、もろい、繊細な女性ばかり。
健気に痛みや、偏見や、ココロの葛藤に耐えて
真摯にご病気と向き合っておられる方ばかりだったから。
さて、不妊治療以外で来院される患者様の
受診理由には
月経を遅らせたい、整えたい、
避妊をしたい、ブライダルチェック希望、
かゆい~とか、なんかへんだ~、とか
いろいろいらっしゃいますが
初診問診表がほとんど白紙状態だと
だいたい、過激な診察になります・・・・・・。
------------------------- 初診問診表 --------------------------
該当する欄にご記入ください。
問1: 最終月経はいつでしたか?
問2: 妊娠・出産経歴について
問3: 手術経験について
問4: 内診に抵抗がありますか?
医師が医学的に特に必要としない以外には
内診を希望しませんか?
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ここまでは、順調にお答えいただけますが
次からだんだん、ペンが重くなります・・・。
・本日はいかがされましたか?
・どのようなことを相談されたいですか?
この二点はほぼ、記入無し。
診察室で、明らかになります。
~40台後半、セレブ風、Aさん。~
ドクター 「 本日はいかがされましたか? 」
Aさん 「 はい、2、3日まえから違和感があって・・・ 」
ドクター 「 違和感ね。どのような? 」
Aさん 「 ・・・・・・・なんとなく・・・ 」
ドクター 「 下着に何か付いたり、ニオイとかそういうこと? 」
Aさん 「 はい・・・。すごく気になります 」
ドクター 「 パートナーから指摘は受けましたか? 」
Aさん 「 はい・・・・。その、ニオイが・・・・ 」
ドクター 「 分かりました。内診しましょうか?
違和感があるなら、雑菌かもしれませんし、
検査してみますか? 」
Aさん 「 え??内診は困ります 」
ドクター 「 しかし、聞くところの症状では
かなりお困りのようですし、
年齢的にも検査をしたほうがよいですよ?
幸いにも、パートナーさんのご指摘を
受けておられるのですから
早くスッキリしたほうがよろしいでしょう? 」
Aさん 「 でも・・・・・。なんか抗生物質とかで
どうにかなりませんか? 」
ドクター 「 Aさん、失礼ですがこうしてお話している間
やはり、少しにおいますからかなり
症状が進んでいると思われます。あなたも、
それが心配でこられたのでしょう?
内診はどうしてもお嫌であれば、
別の方法も考えますが・・・・。 」
Aさん 「 ・・・・・はい。でも・・・・・」
先生は、Aさんに対してやわらかに優しく、
長い時間をかけてお話をされました。
そうしてなんとか納得して、Aさんは内診台へ・・・・。
診察中、看護師さんはずっとAさんの手を取り、
話しかけておられました。
しばらくして受付にいた私が次の方のカルテを
ドクターの席に回そうと、診察室に入ると
「 しっ! 」
と、看護師さんが
こちらに合図をしてきました。
内診台に患者様がいる時は
診察室内の出入りを極力少なくしないといけないので
物音を立てないように気を使ったのだけれど・・・・?
(yong-yoanちゃん、いまは、ダメ!)
(ど、どうかしましたか?)
診察室の中は、中学の頃科学実験で嗅いだような
あの、イオウのような、匂いが充満していました。
!!!!!!な、なに?オートクレーブの故障???
(はやく、外でて!!)
(は、はい!)
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《 以下、内診台でのやり取り 》
ドクター 「 Aさん、何入れました? 」
Aさん 「・・・・・・・・・」
ドクター 「これ、腐ってます。中でとりきれなくて残ったんでしょう 」
Aさん 「・・・・・・・・・」
ドクター 「 異常に気が付いたのは2,3日前とおっしゃったが
これじゃあ、5日はたってます。
お辛かったでしょう? 」
Aさん 「 お、お恥ずかしい限りで・・・。そ、その・・・
私が寝ている間に、た、たぶん主人が
・・・・・・・・・・・いたずらを 」
ドクター 「 理由は結構です。
しかし、デリケートなところですから。
第一、不潔ですし、けしからんですよ。
今日は錠剤と、抗生剤を投薬しますから。
あすから、1週間洗浄にいらしてください。 」
Aさん 「 あ、あの・・・・。いつくらいから・・・
・・・・・・・・・・しても・・いいでしょうか・・・?」
ドクター 「 治りきってからですね。
ただしパートナーとの生活を
見直していただいたほうがよろしいでしょう。
そこ、野菜室じゃあ、ありませんよ・・・・・・・・ 」
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ドクターはこんな診察は嫌というほど経験してきたから
なんとも思わないけれど
女性の体を大切にしない男性が多いこと、
そして、女性も嫌なことを嫌だと言えない弱さが
本当に、なんとかならんのかな~、とおっしゃっておられました。
yong-yuanは当時まだ20台前半だったので
よくわからなかったけれど
「いつから、してもいいのか」
と質問したAさんは
だんなさんとの時間を大切にしたいんだな~と、
Aさんがとてもしおらしく、純粋に思えて
先生のお言葉と思い返すAさんの姿が重なり、
お会計の後、なんだか涙がでてきてしまいました。
思い出すと、きゅんと胸が痛くなる
患者様のお一人です・・・・・・・・・。