Oさんご夫妻はとても仲睦まじいお二人です。
慢性腎不全で週3回透析を受けている奥様に
付き添ってこられるご主人・・・・。
Oさんの苦しい治療中も暖かなほほえみで
付き添ってこられ、私たちスタッフの目にも
すばらしいご主人です。
体調の悪いOさんのために3度のお食事、
家事、買い物をすべてこなし、
いつ容態が急変するかわからないOさんのために
気分転換のお散歩も一緒。お風呂も一緒。
かつ、(ここが夫として最もすばらしい!!)
Oさんが好きなお花をいつも絶やさない
リビングと寝室を保っているそうです。
はああ・・・・ため息。
人工透析導入16年のOさんは
この種の治療を受けている患者様の中でも
トップクラスの温厚でおやさしいお人柄。
スタッフや同じ透析仲間さんにも人気です。
1回の治療で約6時間ベットに縛り付けられ
拘束される状態の人工透析。
自由が利かない、動けない。
思うように食事ができない。
カリウム、ドライウエイトの厳重な制限・管理。
現在の医学では重症の慢性腎不全の積極的治療は
人工透析(HD)、CAPD(在宅腹膜還流・PD)、腎臓移植しかなく、
いかんせん、初期導入時においては特に精神的負担は
計り知れず、
人格にまで多大な影響を
及ぼす、治療のひとつなのです。
しかし、Oさん夫妻はいつも感謝と笑顔の人。
クリスチャンだけではない、人間的心の広さを感じます・・・。
と、今日はOさんお一人で来院です。
「あれ、今日はおひとりですか?」
「そうなのよ。主人体調が悪くて・・・」
あれ、ちょっと寂しそう。
やっぱりご主人が居ないと心細いよな・・・。
「そうでしたか。Oさんもこちらまで(病院まで)お一人で
大変でしたね。タクシーか何かでこられたのですか?」
Oさん、なんだか不機嫌にベッドに腰を下ろします。
(なんか悪いこときいちゃったかな・・・)
「いやあ、寝込んではりますねん。もう2日も。
おかげでうちの事やら何やら渡し一人で・・・」
「ええ、ご主人そんなにお悪いんですか?
インフルエンザか何か?」
評判の仲睦まじいお二人がそろわないので
現場スタッフも集まってきました。
「Oさん、どうしはったの?ご主人さん」
口々にあのおやさしいご主人を心配する皆さん。
「あたしもこんな体でしんどいわあ」
Oさん、やっぱり機嫌悪い。
「主人ねえ、おしりに、できものできてますねん。そりゃまあこう、
ベルトみたいにぶつぶつがずら~~~~~っとできて
気持ち悪いったらないの。『イタイイタイ』てゆうてばっかりで。」
わお・・・。
た、帯状疱疹・・・・・?
「ええ、ヘルペスですねん。でもワタシこんな体やし
主人が居ない間なんかあったら怖いから
どっこもいかんといてってゆうてますねん。
そんな痛み、あたしがいきてる限りうける透析の痛みより
軽いやろ、言うて。シャントした所にこんなぶっとい針さして
(注:シャント・・・通常利き腕と反対の手首あたりの動脈と静脈をつなぎ合わせ、静脈の血管が太くなるような手術を行った部位)
痛い思いして何時間も透析する苦しみと比べたら・・・・・。男の人はホンマにたいそう(大げさ)ですわ。」
帯状疱疹の痛みは、地獄の苦しみって
なんかに書いてあったような・・・・。
あわてて、看護師さんが
「ちょっと、Oさん、帯状疱疹はすぐ治療しないとだめよ。
ウイルスが残ってしもたらまたしばらくすれば再発するだけだし。
それに、ぶつぶつが消えた後の神経痛も怖いから!」
Oさん、顔色一つ変えず、
「とにかく、あさっては透析に。付いてきてもらわな。
タクシー代があほくさいわ。ああしんど」
・・・・・・・夫婦愛って、両方病気持ちだと成立しないのかしら・・・・・
「あさって、付き添いされるであろうご主人のために
カルテ用意しとくように。」
いま、透析カンファレンスで、先生からの指示がありました・・・。
おまけ
人工透析はどこの医療機関でも行っているとは限らないので
参考までに請求業務に関する豆知識。
・ 人工透析は外来透析で1ヶ月約45万円もかか高額な治療ですが、医療保険の「高額療養費」の特例が
適用になるので、1ヶ月に1万円だけ負担すれば、あとの医療費については
すべて医療保険によって負担。(ただし入院時の食事代などは自己負担です。)
もちろん身体障害者手帳(1級)を取得できますので、
自治体によって残りの1万円に関しても助成が受けられます(公費負担)。
ですので実質患者様の自己負担は0円です。
・ また、厚生年金などの障害給付金の支給も受けることができます。(要条件あり)
・ レセプトに関しては長期高額疾病(○長)の記載をします。
・ 現在yong-yuanが住む京都府内においては主病名の明記は必要ないようになっているので
ほかの自治体のローカルルールにはあわないかもしれませんが
慢性維持透析患者外来管理料と特定疾患療養指導料は併算定可能です。
・ 慢性維持透析患者医学管理料には各検査や手技料は包括されています。
採決する際、シャントと呼ばれる血液回路から採取するためであり
透析施行日でない日に外来を受診してなんらかの検査をした場合は
算定が可能です。(透析自体は処置の区分になります)
・ A病院で透析を受けている患者がB病院で別の病気で受診した場合、
B病院の診療費は公費外になります。