ある日の夕方のことであった。
その男はいきなり、やって来た。
ピンポ~ン! ピポ ピポ ピポ ピポ ピンポ~ン!

麺王 「ええぃ! やかましいわっ! 連打すなっ!」

サウザー「よお! 近くまで来たから、ついでに寄ってやったぞ!」
麺王 「ついでだと? 相変わらず面倒なヤツだな」

サウザー「そう、言うな」
「例のDVDを持ってきてやったぞ」
麺王 「なに! そうであったか」
「まあ、飯でも食って行くがいい」
サウザー「ならば、お言葉に甘えるとしよう」

麺王 「今日は鶏肉を使おうと思ってな」
「唐揚げ、焼き鳥、チキン南蛮、鳥天、タンドリーチキン」
「好きなものを選ぶがいい」
サウザー「どれも、選ばぬ!」
麺王 「なにぃ!」

サウザー「チキンといえば、ケンタッキーだろ!」
「俺は今、ケンタッキーの気分だ」
麺王 「むう、うぬは、この俺に買いに行って来いと・・・」
「フライドチキンなど家でも作れるだろ」
サウザー「貴様、あの味が自分でできるとでも思っておるのか?」
麺王 「他人にできて、己にできぬ道理は無い」
「やってやろうではないか」
サウザー「この、愚か者が」
「家庭料理には限界があるということを知らんのか」

麺王 「フッ、限界だと?」
「サウザーよ、しばらく見ぬうちに不抜けたか!」
「限界などという言葉は、
諦めたやつの言い訳に過ぎぬことを教えてやろう!」
諦めたやつの言い訳に過ぎぬことを教えてやろう!」

麺王 「見るがいい! 我がフライドチキンの勇姿を!」
サウザー「なっ!? こ、これは・・・」
「見た目はなかなかの再現度だな」
「だが、肝心なのは、味だよ」
麺王 「ならば、食べてみよ!」

サウザー「ううむ、このサウザー、恐れ入ったわ!」
「香り、食感ともに、かなり近いではないか」
麺王 「ああ、我ながら予想以上のできだ」
「ドライバーショットが、思わずピン横30センチに着けた感じだ」
サウザー「このスパイスは何だ?」

麺王 「市販のやつに、家にあるやつを適当に混ぜてみた」
「それと、秘密は鶏肉の下処理だ」
サウザー「粉をまぶして、揚げるだけではないのか?」
麺王 「実はな、あらかじめ、牛乳で煮るのだ」
「圧力鍋でな!」
サウザー「なるほど、先に肉に火を通しておくのか!」
麺王 「さすがはサウザー、理解が速いな」
「肉に火が通ってるから、揚げるのは、
衣をサクッと仕上げるだけで済むというわけだ」
衣をサクッと仕上げるだけで済むというわけだ」
サウザー「ゆえに、スパイスの香りも逃げぬのか」

ユリア 「あら? あんたたち、オッサン2人で晩酌してんの?」
「あっ、ケンタじゃん!」
「あたしにも頂戴!」
麺王 「そ、それは・・・」

ユリア 「ん? なにこれ?」
「ケンタッキー、味が落ちたわね」

サウザー「・・・・・・・」

麺王 「・・・・・・・」