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『わんっ』
唐突にそんな鳴き声が聞こえた気がした。
ここの所私は多忙を極めていた。神経を常に研ぎ澄ましては磨り潰す、そんな作業を四六時中繰り返さなくてはいけないはめに何故か陥っていた。
そんな現状なのだから何が見えて何が聞こえたって何ら可笑しくはない。
先日も見えてはいけない何かが私に手招きをし
『同情するなら金をくれ』と訳の分からないことを言われたばかりであった。
ただその時の幻視幻聴は実際に起きていたことではなく、私の脳内環境の異常により引き起こされた非現実的な出来事であったのは明らかであった。
なので今回の鳴き声も、ちゃんちゃらおかしい脳内異常による幻聴なのだと私は悟った。
しかし、声が未だにかつてない程近くで聞こえたのは気のせいであろうか、いまだにハァハァとも聞こえる。
私はおもむろに振り返る。
そこには愛らしい瞳を持ち、すんすんと鼻を鳴らす可愛らしいドーベルマンが、癒されがたい鋭い牙をこちらに向けて、ハッハッと吐息を漏らしている。
そしてその背後にはもう1つの黒い影。
私は一時混乱した、とうとう幻覚まで見えはじめたか…
そんな私プライスレス、なんて心の中でガッツポーズをしてみたが
一向に、目の前で涎を垂れ流すドーベルマンの鋭い視線が消える気配はない。
それどころか今か今かと襲えの合図を待ち、早くガブリと噛んでしまいたいですます。なんて心情が読み取れそうな顔までしている。
そんなドーベルマンとの心理戦を繰り広げている間に、おもむろと犬の背後にいた黒い影がこちらに歩を進めてきた。
月明かりが彼を照らした。
その瞬間、混乱してもはや卑猥なことさえ考えかけていた脳が、物凄い速さで猥褻思想を淘汰し、ことの次第を一挙に把握。
疾風の如き早さでその場から逃げ出した。
ドーベルマンは何故か追ってこない。
斯くして私は、意外にすんなりと獰猛そうなドーベルマンと正体不明の謎の男から逃げ出すことに成功したのであった。
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『わんっ』
唐突にそんな鳴き声が聞こえた気がした。
ここの所私は多忙を極めていた。神経を常に研ぎ澄ましては磨り潰す、そんな作業を四六時中繰り返さなくてはいけないはめに何故か陥っていた。
そんな現状なのだから何が見えて何が聞こえたって何ら可笑しくはない。
先日も見えてはいけない何かが私に手招きをし
『同情するなら金をくれ』と訳の分からないことを言われたばかりであった。
ただその時の幻視幻聴は実際に起きていたことではなく、私の脳内環境の異常により引き起こされた非現実的な出来事であったのは明らかであった。
なので今回の鳴き声も、ちゃんちゃらおかしい脳内異常による幻聴なのだと私は悟った。
しかし、声が未だにかつてない程近くで聞こえたのは気のせいであろうか、いまだにハァハァとも聞こえる。
私はおもむろに振り返る。
そこには愛らしい瞳を持ち、すんすんと鼻を鳴らす可愛らしいドーベルマンが、癒されがたい鋭い牙をこちらに向けて、ハッハッと吐息を漏らしている。
そしてその背後にはもう1つの黒い影。
私は一時混乱した、とうとう幻覚まで見えはじめたか…
そんな私プライスレス、なんて心の中でガッツポーズをしてみたが
一向に、目の前で涎を垂れ流すドーベルマンの鋭い視線が消える気配はない。
それどころか今か今かと襲えの合図を待ち、早くガブリと噛んでしまいたいですます。なんて心情が読み取れそうな顔までしている。
そんなドーベルマンとの心理戦を繰り広げている間に、おもむろと犬の背後にいた黒い影がこちらに歩を進めてきた。
月明かりが彼を照らした。
その瞬間、混乱してもはや卑猥なことさえ考えかけていた脳が、物凄い速さで猥褻思想を淘汰し、ことの次第を一挙に把握。
疾風の如き早さでその場から逃げ出した。
ドーベルマンは何故か追ってこない。
斯くして私は、意外にすんなりと獰猛そうなドーベルマンと正体不明の謎の男から逃げ出すことに成功したのであった。

