『Theremin』は1977年にアメリカのDelosからリリースされたテルミン奏者Clala Rockmoreのアルバムである。
Theremin
Clara Rockmore
テルミンという電子楽器はどこまで世間に浸透しているのだろうか?私が知ったのは『モンド・ミュージック』のテルミンの特集記事でだった。そしてClara Rockmoreがテルミン奏者の第一人者である事を知ったのだった。
モンド・ミュージック
テルミンの特集記事
皆さんはテルミンの音を聴いた事が有るだろうか?テルミンとは手を触れずにテルミンのアンテナ(?)に手をかざして演奏する楽器である。私は昔々小山田圭吾のCorneliusのライヴで確か高野寛が演奏しているを観た事が有る。また、雑誌『大人の科学マガジン』の付録に小さなテルミンが付いていた事が有って、それを買って実際に遊んでみた事が有る。上海にも持って来たのだが、子供と遊んでいる内に壊れてしまった。
大人の科学マガジン
或る日、『モンド・ミュージック』を読み返していて、日本のミュージカル・ソー演奏の第一人者の都家歌六が私の音楽耳のアンテナに引っ掛かり、上海に持って来ていた『究極ののこぎり音楽』を聴き返したのだが、『モンド・ミュージック』が紹介するところの同じく"エーテル"的な音楽であるテルミンの音楽=Clara Rockmoreを聴いてみたくなり、今回彼女のアルバム『Theremin』のMP3アルバムをダウンロードして聴いてみたという訳だ。
私のテルミンの音の遠い記憶のイメージは"ミョオオオ~~ン"みたいな感じだったのだが、『Theremin』を聴いたら、全くイメージと違っていて驚いた。
それでは早速『Theremin』を聴いた感想を書いて行こう。先ずは曲目を紹介。曲目の後ろの( )は作曲者である。私が知っている作曲者はストラヴィンスキー、ラヴェル、チャイコフスキーだけだ。
01: Vocalise (Rachmaninoff)
02: Song Of Grusia (Rachmaninoff)
03: The Swan (Saint-Saens)
04: Pantomime (De Falla)
05: Hebrew Melody (Achron)
06: Romance (Wieniawski)
07: Berceuse (Stravinsky)
08: Piece En Forme De Habanera (Ravel)
09: Berceuse (Tchaikovsky)
10: Valse Sentimentale (Tchaikovsky)
11: Serenade Melancolique (Tchaikovsky)
12: Chant Du Menestrel (Glazunov)
ちなみにプロデュースはモーグ・シンセサイザーの生みの親、Robert Moogである。これには少し驚いた。
Robert Moog
先ずテルミンから出される音と音程が非常に安定している。これはClara Rockmoreの演奏能力の高さによるものだろう。彼女はクラシック音楽の教育を受けていた他、絶対音感を持っていたそうだから、元々の素質にもよるのだろう。次にテルミンの音なのだが、この音がテルミンの音と教えなかったらクラシック歌手の声だと思ってしまうだろう。しかしよく聴くとやはり電子楽器の音である。これは聴けば誰でもわかるだろう。
そして各曲の全体的な音楽としての印象は非常に落ち着いている。それはテルミンの伴奏がピアノだけとシンプルだからだろう。今、私は夜寝る前に聴いている。普段、私が音楽を掛けるとうるさいという妻も、『Theremin』には何も言わない。(私が特殊な(変な?)音楽を掛け過ぎるのかもしれないが。)
テルミンというと何だかモンドな楽器のような感じを受けるかもしれないが、このアルバムはクラシック音楽が好きな人は勿論、静かな音楽を求めている人に激オススメしたい。
ところでテルミンを開発したLev Termen (西側諸国ではLeon Theremin)について少し書くと、Clara Rockmoreに何度もプロポーズしたが断られたそうな。Clara Rockmoreはテルミンの演奏者であると同時にLev Termenにテルミン開発の助言もしたそうだから、Lev TermenがClara Rockmoreと結婚したいと思った気持ちもわからないではない。Clara Rockmoreはどう思ったんだろうね。"うざい"と思ったのかな?なんてね。
Lev Termen (Leon Theremin)
最後に実際のテルミン演奏の動画を貼っておこう。ミュージカル・ソーの演奏もなのだが、音楽だけや動画ではなかなか"エーテル"感がわからない。演奏している楽器から音が聴こえてくるのではなく、別の場所から空気が振動して音が伝わるのがわかりにくいという事だ。故、機会が有ったら生演奏を聴いてみたいと思っている。生きている内に実現できるかな…