浴室 -39ページ目

M男と

いつだったかM男と付き合っていた時があった


わたしはM男がとても好きだった、ごめんなさいという顔も、懇願する顔も、好きだった


首輪をつけて、四つんばいにさせて嬲った


嬉しそうに吐息を漏らす彼を愛しいと思った


「どうしようもない子ね」


目を潤ませながら、嬉しそうに困った顔をする彼を愛しいと思った


奉仕という名目で何かをさせることも好きだった


彼の泣く顔に興奮した、どうしようもない位に



全て壊して、全て修復したかった、苦痛も快楽も全て与えたかった、支配したかった



でも、なんだか挿入だけはできなかった


それはSとしての自覚なのか、なんだか嫌だった


M男であり、わたしの恋人であった彼は挿入という行為でわたしが一方的に快楽を得て


自分が玩具になっているつもりが味わいたかったのだと思う、そのようなことを言っていた


男性主導の行為だから、わたしが女として自覚する一番の行為だから


嫌だったのかもしれない、そもそも、仕事以外でプライベートではセックスできないわたしは


それだけの理由だったのかもしれない、抱かれる、抱く


でも、彼以外にプライベートで関係を持った人はいない、これだけは本当


今これを彼が読んでいたとしたのならば、多分自分だということがすぐにわかると思う


わたしがこんなことを裏でやっていたなんてそんなことは知らない、だから見つかりたくないけれども





でもすごく、好きだったことは確かだから、わたしは、Sだから、Mだから、女だから、、、?





今のわたしはMだかSだかわからないけれども、わたしを満足させてくれるご主人様はそうそういないと思う


どちらでもない、これがわたしの本音、もしかしたら、その時わたしはSをさせられていたのかもしれない


ねぇ、ご主人様

気持ちの良いこと、悪いこと

喉が痛いのは、風邪のせいではなくて、煙草の吸いすぎなのかもしれない


重いタールの煙草をチェーンスモーカーのように吸い続けるわたしは相当なマゾヒスト



気持ちの良いこと、気持ちの悪いこと、それら全てが繰り返されて


極限を求めて



耳を澄ませて聞こえるその音に意識を遮断する


もっと早く、最奥までたどり着くその意識を重ねて



這い蹲ってでも、弱音を吐いても、気持ちの良いことをわたしは探し当てるよ


泣き出しそうなわたしを、蹴り出して、わたしはわたしを進めるよ



最後に

明確な目標が揺らいでも、過去に捕らわれてどれだけ後悔しても


今のわたしは、わたしが選んだ


輝いて見えるわたしは、わたしの希望なのかもしれない


美化されている様々、甘い思い出、二度と引き返せない、あの道


様々な矛盾を抱えて、偽物を掴んでは、偽物を追い求める



わたしの最後に掴んだその物が、たとえ偽物だったとしても


幸せそうに抱えて、死ねれば良い