浴室 -2ページ目

ほら、嘘

見えてる、嘘


どうでも良いのよ、そんなこと、わたしの要求さえ通れば


どうせそんなに長くは続かないと思うの、続けないと思うの


わたしはあの人を、あの人たちを裏切れないから

疎外感

どこからともなく感じる疎外感

まるで目の前にいる人間が映画のスクリーンにいるように見える、疎外感

傍観者になりたいわけじゃないのだけれども

理解されることもなくすることもなく

交わった接点は消え行くことを感じる

今思えば

物事は腹八分目くらいが美味しい


まだもう少し‥もう少し‥と嘆いているくらいのところで辞めてしまうのが


美しい思い出として残るのであろう




わたし史上最悪の、修羅場を迎えた


と言っても、わたしの全てがバレたからではない、むしろわたしは何一つバレていない


彼の行動についての修羅場で、それも偶然


浮気とか、浮気じゃないとか、そういう次元の話ではなくて、わたしはそれを何一つ許すことができなかった


同時に、わたしが普段あまり表に出さず、むしろ持ち得ていないとまで思っていた


「憎悪」


という感情を他人と同じくらいに持ち得ていることも知った、むしろそれ以上かもしれない




「飼い犬に手を噛まれた気分」


まさしくその通り、だれに聞いても容姿も収入も学歴も友人関係も何一つわたしより勝っていない男に


わたしがここまで傷つけられる


頭が悪いのは、学歴的は意味ではなくとも、物事を考えられないのは


致命的であり、もう救いがたいことであるということも知った



「新鮮であったのだ」


前述したような男が、わたしにストレートに気持ちをぶつけてくることが


いわゆるエリート特融の嫌味もない、策略もない、そんな初めての体験にわたしは酔った


つまりそれはわたしが普段おかれている状況と全く正反対の状況であり


ステーキばかり食べてきたわたしが、お茶漬けを食べたいと思ったような


そんな好奇心



「幸福なカップルの条件」


というのをどこかで聞いたことがある


容姿については年齢とともに衰えるのでおいておいたとしても


同じレベルで、少なくとも多方面から考えられる人間ではないと疲れる


良い意味でこちらの予想を裏切るのではなく、突拍子もないような現実を突き付けられる


まさしく理解不能、わたしは摩耗されていく



「彼にとって、あなたは毛皮のコートのような存在なのよ」


目から鱗が落ちるような発言をわたしが最も信頼し、尊敬する人物に言われた


確かにわたしといるだけで、少なくとも価値は上がるであろう


一見冴えない人間が、それこそ目を引く女性を連れている


何かあると思うに違いない、少なくともわたしならそう思う




わたしの毛皮は、わたしというブランドは、わたしが成長するために


作り上げてきたものであるのに、彼に着られて摩耗されているようでは意味がない




「浮ついたわたしの心」


その理由はまさしく「新鮮味」、後若さもあるのかもしれない




「罪悪感」


すなわちわたしが彼を選んだ理由は新鮮味もさることながら、わたしが抱えている罪悪感の影響だと考える


できることなら、愛人なんてしないほうが良い、水商売なんてしないほうが良いのである


つまりわたしが得てきた対価は誰かを不幸にして成り立っていたものであると


あるいは誰かの決して綺麗であるとは言い難い欲望と引き換えに手に入れてきたものであり


それについてわたしは自分では意識しないようにしていても、心の奥深くでは感じていたということであろう


その罪悪感を解消するために、あるいは自分を戒めるために、彼という人間を選んだと考える


まるで花に水を注ぐように、決して恵まれているとは言えない彼を


高いところから見下ろして、わたしが得ている全ての特権を分け与えることで


彼を飼っているような、あるいは育てているような、そんなマスターベーションを行っていたのだ


そしてわたしが摩耗することで、許されると思っていたのだろう


しかし、わたしがしてきたことやしていることはそんなことで、代償行為で済まされるものではなく


また、わたしが分け与える人間は彼ではない、他にもっとたくさんいる




でも彼のその発端が「人妻」だったことには少し驚いた


あれだけ混乱しながらも


「これでわたしは許されたのかな」


なんて思ったわたしはやはり痛んでいるのか




しかしとりあえず付き合いは続行、同じ職場にいる今下手に動かれたくない、そして何をされるか判らない


「物事は腹八分目くらいがちょうど良い」


グレーゾーンの見切り発車を今までしてきたけれども、やっぱりそれが一番正しい選択であったと


今なら間違えなくそういえる、過去のわたしの決断は間違ってはいなかった


未知なる生物の観察


本当は興味関心が微塵にもない人間に対して、そう感じさせないテクニック




やっぱり女優なのかもね、あなたのお蔭で磨きがかかるわよ