エッセイふんわり (17) 00Dec:パスとリード/女性の声 | 容子のふんわり行きましょ

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もとトークばらの山下容子です。2000年から2015年まで『ふんわり行きましょ』というホームページを持っていました。

ふんわり行きましょ第17回(ひまわり48号、2000年12月)

 

トランスジェンダーの世界で『パス(pass)』はバレない、『リード(read)』はバレる、ってことだけど、私の友人のN美ちゃん(正真正銘の女性です)(*1)はよくバレる(?)

 

彼女はもうすぐ40に手が届く、というお年頃。ちょっとエキゾチックな感じのホリの深い細面の美人で、170cmの背丈があるせいか、街を歩いててしょっちゅう女装者に間違われるみたい。

 

この前なんかトイレで疑いの目で見られた、って笑ってました(彼女は開き直ってます)。街を行く女装者が増えるとみんな敏感になっちゃって、あの人ひょっとすると・・・とよく観察するようになったせいもあるんでしょうね。

 

私は彼女をよく知ってるから鈍感になっちゃってるけど、たしかにそう言われればニューハーフにも見える(笑)。声もちょっぴりハスキーだし・・・

 

私も街で時々バレてます(*2)。あれっ?という視線が来るから、バレたかな?ってわかる。以前はがっかりして落ち込んだりしたけど、N美ちゃんの話を聞いてるうちに、なんだかどうでもいいような気もしてきました。

 

この頃なんか、アレっという視線が来るとにっこり微笑み返す余裕まで(笑)。オバさんになって厚かましくなったせいもあるんでしょうけど、でも、目を伏せたりするよりは、にっこりしたほうがそれっきりで終わっちゃって、ずっといいみたい。

 

トクしてるなって思うのは、もともと声が少し高くて、そして猛練習(?)のおかげで女性の声が使えること。ショッピングやお茶の時にアレっという視線が来ないので気がラク。

 

20年も前のことですけど、少し高いめの声で女性らしいしゃべり方の練習を繰り返しているうちに使えるようになって、不自然さもだんだんと消えていきました。声の高さそのものよりしゃべり方のほうがずっと大切みたいです(*3)

 

岡山の真由美(正真正銘の女装の子です)(笑)の場合は、通勤のクルマの中で歌の練習をしてマスターした、って言ってたけど、ほかにも自分の声をカセットテープに吹き込んで、だんだん高くする練習方法もあるって聞きました。

 

・・・とは言うものの、今でも時々うまく声が出なくて、アレっという視線が来ることがあるので、修行(笑)はまだまだたりません。

 

ちょっと前に『インターセクシュアル(半陰陽者)の叫び』(小田切明徳+橋本秀雄、かもがわ出版)という本を読みました。この本はすごく考えさせられるところが多くて、そのうちじっくりと感想を書いてみたいと思ってますけど、女性半陰陽の吉川みほさんのお話がとくに印象に残っています。

 

彼女は姿かたちも声も女性と男性の中間タイプで、パスとリードの間でわけがわからなくなって、そのことだけでも悩みがすごく大きかったみたいなのです。だからと言って、男性と女性の二つに分けてしまう世の中がいけない、と言ってみてもはじまらない。

 

N美ちゃんやみほさんのことを考えると、パスにまつわる悩みはいったいなんなのでしょう? でも、リードされないほうが気がラクなのもたしかです。同じように悩んでいるトランスジェンダーの人はホントにホントに多いのでしょうね。

 

近頃はこう考えています。アレっという視線が来た時に目を伏せることなく、あなたのご想像にまかせます、って信号でにっこり微笑み返す。そして、まあいいか、と思わせる(笑)

 

これで悩みが消えちゃうこともないんですけど、しばらくはこのセンで行こうかな、と・・・

 

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ずっと前@岡山県奥津町

ずっと前@鳥取県用瀬町

 

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今回の写真は(最近の写真がなくなっちゃったので)20年近く前の冬のはじめに岡山県の奥津温泉に行った時のものです。Kさんのシルビアというスポーツカーは、知る人ぞ知る超レアものだそうです。

 

あの頃も時々バレては落ち込んでたことを、あらためて思い出して、懐かしい気持ちです。

 

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10月号はお休みしてごめんなさい。実は更年期障害で(笑)自律神経失調症になってました。あのー、笑いごとでもないんです。木の実ナナさんや山口洋子さんもかかった、っていう更年期ウツ病の軽いの・・・(*4)

 

更年期になってホルモンのバランスがくずれると、体がほてったり、反対に冷たくなったり、そして、体がだるくなったり、気力がなくなったり、憂鬱になったり・・・

 

女性は閉経があって女性ホルモンが急に減るから、あっ、これだ、ってすぐにわかっちゃうけど、診断してくださったお医者さまによると、男性も35歳から50歳くらいの間に男性ホルモンがぐぐっと減って、同じような症状になる人が時々いるんだそうです。

 

私はさんざん迷った末、結局、性転換に踏み切ることはありませんでした。私のような体質は、性転換してたらきっとホルモンバランスの崩れによる自律神経失調症とウツ病に悩まされたんでしょうね。

 

その時、自分で決めたことだから、と最後はあきらめがついたか、それとも自殺していたか(今回、自殺する人にいろいろと共感を覚えてしまいました)、それはわかりません。そして反対に、今でも性転換しなかったことについて心の整理がついたわけでもありません。

 

でも、ウフフ・・・、男性ホルモンのレベルが下がってる、って言われて悪い気がしませんでした。更年期もいいかな、って・・・(笑)

 

体調と相談しながら、これからものんびり、もう少しこのエッセイを続けてみようかな、って思っています。

 

(2000年11月19日)

 

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(*1)彼女とは(トークばらの近くにその頃あった)スナック『こころ』でよくお隣り同士になり、おしゃべりしました。今は彼女もアラカンなのね。

 

(*2)『あれっ?』はその後だんだん少なくなって、今は視線が飛んでくることはめったにありません。でも、近頃これは『トシ取った目立たない人には関心が向かないから』と考えるようになりました。女性は(とくに世代が近い)同性の顔やスタイル、メイク、振る舞いなどに敏感ですよね(男性たちはカンペキ鈍感だけど)。だからちょっとした違和感にも気づいてしまいます。《若い時には木を森に隠そうとしても限界があるわねぇ》と今では思っています。

 

(*3)トシ取ってくると高い声が出にくくなります。去年リバイバル容子した時に一番心配したのはそこでした。でも、無理に高い声を出すとかえって違和感が出ちゃうし、無理のない高さで無理のないしゃべり方を心がけました。問題は何もなかったです。

 

(*4)ひまわりにはこう書いたけど、うつ病です。この時はまだ『うつ病のカミングアウト』を済ませていませんでした。そのあと『更年期になってホルモンのバランスが崩れると・・・』からのお話は本当のことです。

 

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