私たちの生き方には二通りしかない。
奇跡など全く起こらないかのように生きるか、すべてが奇跡であるかのように生きるかである。
/ アインシュタイン
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えーと、どこまで書いたっけ。
こんなタイムマシン日記を読む人も少ないと思うけれど、まあ日記なんてものはそんなもんだ。
ああ、そうそう。アトス山への船を待ってるところから。
てなわけでRPGよろしく入山許可証をもった僕は船へと乗り込んだ訳で。
大王イカに襲われたり、セイレーンの歌声に惑わされる事も無く、無事に半島に到着。
近づいてくる山は、自然が残ったままの姿でなかなか壮観であります隊長。
船上で、えらく親切なギリシャ人に会う。
その人は信心深い東方正教会の信者で、定期的にアトス山への巡礼を行っているんだとか。君は何教だ?と聞かれ、いや無宗教なんですよって答えると、何故宗教を持たないのか?と質問される。
日本人はみんな宗教的基盤が弱くて全員無宗教みたいなモンですよ、と答えると「ああ、そうなんだ」と心の底から悲しそうな顔をしていた。ちょっと悪い事をした気分になってしまう。
港に到着し、船から降りたら入山チェック。
8mm のビデオカメラとテープを持って行ったんですが山は撮影禁止、とかでテープを一旦取り上げられる。既に何か撮ってないか今からテープもチェックするぜ?とか言われて結構面倒だなーと思いつつ対応。
ここで先ほどの親切なギリシャ人が助け船を出してくれる。
いろいろやりとりしたあと、結局テープが多すぎる事もあり検査の人もあきらめた様子。
親切なギリシャの人に感謝。
アトス山は、宗教専用、女人禁制、海路か徒歩のみという隔絶された社会。
あるのは山と道と修道院。それと簡単なお土産モノ屋。
各拠点の移動は、謎の運搬トラック。
トラックは修道士の人のものだったり、お土産やの人の物だったり、色々らしい。
てなわけで本日泊まる予定の修道院に行くべく、トラックに乗る。
トラックは幌の付いたプリミティブなモノ。一番近いイメージとしては、第二次世界大戦とかで兵隊さんを運ぶようなやつ。そこに相乗りで大量に巡礼者&観光客が乗り込む。全員男。
道路が未舗装で、なおかつトラックがボロなのでこれがまた揺れる揺れる。揺れるというより、もはや体感的には飛ぶに近い。あまりにバッタンバッタンされて、車酔いをしてしまう。
しばらく我慢していたんだけれど、車中で吐いて阿鼻叫喚の地獄絵図を展開する訳にもいかず、大変申し訳ないと思いつつ「すんません、車に酔いました。我慢できません。おろしてもらっていいですか?」と訴える。
ああ、徒歩で修道院までたどり着けるのかしら?とか思いつつ、おろして貰うと「次のトラックが一時間くらいでやってくるから」と言われて一安心。
てな訳で待つ事に。
夕暮れの薄暗い山間。周囲を見渡しても、山・山・山。
あいにくの小雨で妙に寒い。
道ばたに座り込んでしばらく待つことに。
突如猛烈な便意に襲われる。
ちょちょちょ、ちょっと待とう俺。そりゃあ貧乏旅行には野グソの一つも旅の想い出だし紙もあるんだが、ここは宗教の山でみんなが巡礼に来るようなところだぞ?アリなのか?いや、さっきの猛烈な入山チェックを考えると絶対にユルされない行為なのかもしれない…やはりナシか…しかし既に我慢の限界に突入しつつあるし、さっきのような揺れるトラックで上下にゆさぶられたらどうなるか判ったもんじゃない。冷静に考えてみよう。
・今、服を着たまま脱糞するのはマズイよね?
・この山を切り開いた修道僧の方も、最初はフリーダムにトイレをされていたのでは?
・そうこうしてるうちに、我慢出来ないよね俺?
こうして、理性的な判断により藪の中に分け入って事に至った次第。
終わった後、ちゃんと土をかけて自然に帰るように促しましたよ?(どうすればいいのか判らなかったが、とにかく最善を尽くしたつもり)
危機は去った。
かくして東洋の果てから来た青年は、1時間後に来たトラックに揺られ最初の修道院に向かうのでした。
スッキリした顔で。
つづく