高校生が感動した「論語」 佐久協 祥伝社新書
また論語です。
本書の著者は最近まで慶応高校で古典を教えていた先生である。
この手の本にしては引用文章が多く解説が比較的うすい。
また、その解釈も独自色を出していて高校生が話す(と著者が思っている)ような話し言葉になっている。ちょっとくだけ過ぎた感じがした。
しかし引用文が多く、しかもかなりの長文もあり、孔子の人間性が一般の名言集のようなものよりもかなりよく感じることができた。
「韓国が死んでも日本に追いつけない18の理由」 百瀬格 金重明訳 文藝春秋
非常に過激な書名になっているが内容はそうでもない。むしろ韓国に対する深い愛情とエールに満ちたものである。
著者は総合商社トーメン(今はもうない会社ですね)の駐在員として30年近くを韓国で過ごした人であり、特に浦項製鉄所の開設には一方ならぬ思い入れを持っている。
その著者が韓国の良い点は認めつつも日本のこういう点は取り入れたらどうですか、という建設的な提案を行っている。
そもそも本書は著者が韓国語で口述したものをまとめたもので、最初から韓国人の読者を想定してなされ、韓国でベストセラーになり、韓国人の訳者を得て翻訳されたものである。
したがって日本人からみるとあまりぴんと来ないところもあるし、先日の「戦時期日本の精神史」同様翻訳物にある微妙にずれた日本の解釈に対する違和感が残る。(つまり日本人のこういう点を見習え、といっている日本人の美点に対して、「果たして日本人はそうか?」と思えてしまうことが多々あるのである。)
また本書がなされた1998年からの時代背景の違いも見逃せない。
そんなこんなあるが、未だに歴史観等の問題で非常にしっくりきていない両国間の関係を考えた時、こういう交流をしてきた人がいるということを知ることは価値のあることと考える。
個人的にはこれだけ思い入れのあるプロジェクトに参画できて、異国の民と心を通わせることができた著者を心からうらやましく思う。
(全く関係のないことであるが、韓流スターに血迷っている日本の中高年の相互理解とは全く別の次元の話である。)
「戦時期日本の精神史」 鶴見俊輔 岩波書店 同時代ライブラリー
1979年にカナダの大学で行われた講義録に手を加えたもの。
転向ということが一つ大きなテーマとして全体に貫かれている。
その他、鎖国性とか原爆に対する解釈など正統派の論説である。
私が一つ注目したのはカナダの大学で英語で講義された内容であるということで、明らかに非日本人、というよりも欧米人向けに日本人の精神を紹介しようとした意図が強いことである。
そのために「生きて虜囚の辱を受けず」という戦陣訓、特攻精神の解説や、欧米に対する劣等感、ソビエト・ロシアへの嫌悪感が前面に出ているように感じられる。
英文で書かれた日本の紹介文として有名な新渡戸稲造の「武士道」、内村鑑三の「余は如何にして基督教徒となりし乎」「代表的日本人」にある共通した臭みを感じてしまった。
特に本書には欧米人に合わせたおもねりに近い印象を受けたのは過剰反応だろうか?
銀次
今日は暑かった。
出先から直帰になったが、時間があまりにも早かったので一駅乗り越して横須賀で降りる。
夕日照りつける中、芸術劇場の前を通ると奇抜な衣装をした20歳前後と思しき女性たちが大勢いる。おそらくコンサートがあるんだろうな。
中央まで歩き銀次に入る。
テーブルは空いているがカウンターはかろうじて一つだけ空席があり、狭い中割り込ませてもらう。
今日は酒を飲まない日にしているので一杯だけ。ホッピーとしめ鯖をオーダー。
氷なしのホッピーはややぬるいがやっぱりおいしい。
もう一杯といいたい所をこらえて900円のお勘定を済ませる。
またのんびりとJRの駅まで歩く。
行きは通らなかったが、ヴェルニー公園のボードウォークを通るとコンクリートの所よりも明らかに涼しいのが感じられる。ボードウォークというのはそんな効用もあったのか。
海を見るとくらげが大発生していた。
「潜行三千里」 辻政信 毎日ワンズ
日中戦争以降の数々の作戦を指揮し「作戦の神様」ともいわれた元大本営参謀の著者が、日本の敗戦をタイで迎え、日本の敗戦で潜伏が非常に困難な状況の中、ベトナムを経由して重慶に入り、国民党政権に日中提携を進言するも時すでに遅く、ついに危険を覚悟で日本へ6年ぶりに帰国する決意を固める。
というような筋だと私は理解した。あくまで本人の書いていることで自己正当化は当然あると思う。そもそもタイで潜伏を始めた動機が不明確で、国民党への進言というのも降ってわいて出た理由付けのような印象が強い。
日本帝国陸軍の大本営参謀元大佐ということで、いくつもの作戦において強い影響を持っていたのであろうし、敗戦の責任という問題も大きくあろうかと思う。瀬島龍三よりもうひとつ大物という印象です。
したがって、戦犯を逃れるための潜行という側面もかなりあったんではないかと思ったりもする。とにかくそういった背景はベールに包まれたままで、日本敗戦直後の旧占領地を危険を顧みず重慶までたどって行く、という当時の世相を生々しく描きながら、スリルと冒険の旅という面が強調されている。その部分ではたしかに非常に興味深い。そこには現地人をかなり見下したような記載も多く、かなり強い偏見も感じられるが当時の現地の様子がよく伝わってくる。
繰り返しになりますが、政治的なことを抜きに痛快冒険物と考えれば、基本はノンフィクションだろうし面白い読み物といえると思った。