「潜行三千里」 辻政信 毎日ワンズ  | うみパパのブログ

「潜行三千里」 辻政信 毎日ワンズ 

日中戦争以降の数々の作戦を指揮し「作戦の神様」ともいわれた元大本営参謀の著者が、日本の敗戦をタイで迎え、日本の敗戦で潜伏が非常に困難な状況の中、ベトナムを経由して重慶に入り、国民党政権に日中提携を進言するも時すでに遅く、ついに危険を覚悟で日本へ6年ぶりに帰国する決意を固める。


というような筋だと私は理解した。あくまで本人の書いていることで自己正当化は当然あると思う。そもそもタイで潜伏を始めた動機が不明確で、国民党への進言というのも降ってわいて出た理由付けのような印象が強い。

日本帝国陸軍の大本営参謀元大佐ということで、いくつもの作戦において強い影響を持っていたのであろうし、敗戦の責任という問題も大きくあろうかと思う。瀬島龍三よりもうひとつ大物という印象です。

したがって、戦犯を逃れるための潜行という側面もかなりあったんではないかと思ったりもする。とにかくそういった背景はベールに包まれたままで、日本敗戦直後の旧占領地を危険を顧みず重慶までたどって行く、という当時の世相を生々しく描きながら、スリルと冒険の旅という面が強調されている。その部分ではたしかに非常に興味深い。そこには現地人をかなり見下したような記載も多く、かなり強い偏見も感じられるが当時の現地の様子がよく伝わってくる。


繰り返しになりますが、政治的なことを抜きに痛快冒険物と考えれば、基本はノンフィクションだろうし面白い読み物といえると思った。