第1回③~構造把握の重要性を認識する~ | 大学受験 英語勉強法 〜灘高&京大卒 塾講師からの指南〜

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中学受験に失敗…その後懸命に努力し高校受験で灘高に合格! 一時燃え尽き症候群で苦しむも再起し京大合格! 今ではその経験を活かし、塾・予備校講師として主に高校生・浪人生に英語を教える日々。そんな講師が具体的な大学受験の英語勉強法を提示する。

さて、これまで2回を通してbutより前の文構造の把握と、それに基づいた訳を紹介してきました。今回は残っているbut以降の形をとっていこうと思います。


【問題再掲】次の文は「人生経験を通して大きく性格が変わり予想だにしない行動をする人もいる」という文脈に続く英文である。全文を和訳しなさい。

In the examples I am thinking of the person continues to behave in what most people would agree is a normal manner, but one so remote from his old self that he appears, to those who know him, to be someone else entirely.


●解説●
but以降の形がとれたでしょうか? 実はこの部分で難しいのはbut以降の形ではなく、but自体です。すなわち、butが一体何を並列するのかというのが非常に難しいのです。


butの前後では『論理が逆転する』と言われます。ただこの言葉の真意を掴むのはなかなか難しいです。


確かにプラス・マイナスイメージが入れ替わるといったものも存在しますが、それだけで終わるような単純なものではありません。具体的に今回の英文を見ながら考えていきましょう。


まずは大きな構造を把握していきます。


but one (so remote <from his old self> that he appears, <to those (who know him)>, to be someone else entirely) というようにso remote以降がすべてoneに修飾している形となっています。


so remote以降に関しては、so ~ that SV …構文が含まれていて、remoteという形容詞がoneに後ろからかかっています(後置修飾)。


さて、ここで問題となるのがoneは一体どういった意味で使われているのでしょうか? もちろんこれはbutが何と何を並列するのかも同時に考えていく必要があります。


oneには「一般の人」を表す用法以外に、代名詞的に使っていく「one = a 前出名詞」となる用法があります。


ここではこの後者である代名詞的に使っていく用法です。では、具体的に何を受けているのでしょうか?


so remote以降の内容は「あまりにも昔のその人からかけ離れているので、その人を知っている人からすれば全くの別人に思える」「その人を知っている人からすれば全くの別人に思えるほど昔のその人からかけ離れている」となっています。


これも参考に考えると、今回は"one = a manner"だと判断できます。


そうすると、but以降は「昔からの知人からすれば全く異なっているように思える方法」という内容を伝えているとわかります。


これも踏まえてbutが並列するものを考えれば、今回はwhat節とoneを並列しているとわかります。


確かにwhat節は節であり、oneは名詞なので、バランスが悪く見えるかもしれません。しかし、共に「方法」を表す名詞だということは変わりません。


すなわち今回は、「昔からその人のことを知っているわけではないほとんどの人々(most people)」と「昔のその人のことを知っている人々(those who know him)」との対比が成立しているとわかります。


このようにしてすべての構造が把握できました。あとはこれに基づいて訳すだけですね。


よって、今回の英文は『私が考えている例では、その人は、たいていの人々が[であれば]普通の方法だと同意するであろう方法だが、あまりにも昔のその人からかけ離れているので、その人を知っている人からすれば全くの別人に思える方法で振る舞い続けるのだ』となります(かなりベタベタの直訳にしています)。



●最後に●
どうでしょう? 適当に構造をとり、和訳したのでは到底正解に行き着くはずもない問題だと思います。


正直言ってここまで構造のややこしい問題を東大が出してくることは近年はありません。しかし、この問題は決して難しいというのではなく、『基礎力を徹底して聞いている』というものだと思います。


このような問題でも的確に解答を作っていけるだけの構造把握力を身に付けていってほしく思います。