公演が開幕する時には、お祓いをすることがある。
『二都物語』でも、舞台稽古の時に神主さんを呼んで、公演の無事と成功を祈願して貰った。
舞台というのは、時に人間の力ではどうしようもない事が起きる。本当にたまたまだったり、奇跡的な噛み合わせが起きたり、いくら細心の注意を払っていても、確率をはるかに超えるような出来事が起こる。
そんな事が起きないように、となると、もはや神に祈るしか無い。
それとは別に、帝劇の楽屋口を入って突き当たりのエレベーターホールには、神棚が祀られている。
みんな毎朝お祈りして行くのだが、ちょうどエレベーターが来ていて、しかも誰かが押さえて待っていてくれたりすると、お祈りはすっ飛ばして慌ててエレベーターに乗り込む日がある。
この間もそんな日で、いつも通り順調に舞台が進行していたのだが、稽古から含めても一度も転んだ事が無いようなところで、二箇所もすっ転んだ。
一つ目は、突然の銃声に驚き、横たわる子供を抱きかかえるのを手伝おうと飛び出した時につんのめり、特に何を手伝うでもなく、大はしゃぎで前ツラに飛び出して来た人になってしまった。
もう一つは、二階から下りてくる時に自分の靴紐を踏んで、二、三段滑り落ちた。久しぶりの生傷。
昼公演だけで二回もコケるなんて、これはかなり縁起が悪い。
こんな時は、アクシデントが起きたり、セリフが飛んだり、魔が差して普段絶対やらない様な事を、何の気なしにやってしまったりするのだ。
その回の残りと夜公演は、帰りに「お祈りすっ飛ばしてごめんなさい」と謝るまで、いつにも増して気を付けてやった。
やっぱりお祈りは大事だな(´・ω・`)