武術国際大会にて


ここ2~3日は関東地方全体が冷え込んで最低気温も6度、富士山も雪化粧をして初冬の訪れを感じられるようになりました。

これからは空気も益々乾燥してくるので、今までに紹介してきた意識呼吸法、鼻や喉の洗浄、質の良い練功で血液循環を活性化しての高体温感覚を身につけて、

この冬型での「未病をすべて防ぐ」体質づくりがうまくいくと、その自らの心身感覚への安心を得られる「拠り所」の感覚を実感できます。

私たちのこれからの活動もフィットネス活動では屋内なので、問題は何もなく、いい感覚で太極拳や健身気功の向上を目指していくことと、

野外太極拳では、冬向けの屋外においての伝統功法で1年で一番寒くとも空気のきれいな環境での練習、武術班では冬季訓練に入っていきます。

昨晩の武術班の練習では、今年の大会や交流会でのひとつの目標の達成感もあって、次のステップへ向けた活気があったことが非常に良かったです。

練習時間内では、武術理論をお伝えすることが限られるので、昨日途中までお話していたこれまでの中国武術界における武術比武での「伝統功法、自選、規定、高難度」の順が正しい成立過程で、

練功においては、若年層に一時期的に打ち込む「スポーツ競技的武術」や「趣味武術」などの指導陣との意識差の根拠をお伝えします。

(※現代日本社会には多くの分野で不適切な論理の展開や、具体性事実のない論説を主張する御用学者が多くあって、様々な事象で意識的混乱を招くことがあるので武術界も今後は注意したいと思っています)

私の経験で感じるのは、やはりとにかく質の高い「健身養生」が最も重要で、よく世間に言われる「性格は顔に出る、生活は身体に出る」というのは本当で、

毎年、年々での生活のメリハリを付けるためのモチベーション向上のために競技会や交流会、海外研修などがあると国際交流にも繋がり、時間が経つと感じられる有意義なライフワークの積み重ねに結びつきます。

有意義なライフワークの積み重ねがあると、どう感じられるのか、というのは自らの足跡や自他共に歩んできた道程に達成感や感謝の想いを感じられ現代日本社会にありがちな軽薄な人間関係や小さな身内所帯のような狭い空間とは一線を画し、

大自然の働きは、時に荒れ、心に懸念が生じるようなことがありますが、

時は過ぎ、見渡せば、

広く雄大な海原や大空を感じるような、己の行く人生の中にでも清清しい世界観を持つことができると思います。

「健身養生」での功法での大事な意識感覚は「健身気功」項目では「心・意・気:心至りて意に至る、意至りて気に至る」境地で、

「太極拳」項目では「意・気・力(勁):意至りて気に至る、気至りて力(勁)に至る」境地です。

冬場に大事な感覚は、導引術や伝統華侘五禽戯を通じた「心・意・気」の向上感覚の実感、太極拳系では、陳式太極拳での基本功での勁の流れの意識、呼吸法での肺活力活性化、龍身蛇形太極拳での全身意識動作の感覚、総合太極拳的推手での技能功法の相互実感での触覚のレベルアップになります。

防身・健身・修身

今こうして振り返ると、ここまで流派や拳種、功法に壁を越えられらたのは私たち自身が「日本人」であった恩恵を感じます。

もし中国人の武術人士同士での感覚だったら、ここまでにはできなかったことを想うと、こうした感覚が「弥生時代、古墳時代から2000年続く、日本と中国での文化交流」のように思うことがあります。

そして、武術系で重要なのは、

武術二十四要:「四撃(現在は武術五元素)・八法・十二型」です。

 四撃 八法 十二型 

武術院でもう長く功法を行っている皆さんはお馴染みですが、中国武術の大きな特徴として、

「健身:套路」「防身:攻防」「修身:功法」の三要素の融合がしっかりとあるものである、これが一番重要です。

日本国内の武術事情にも「何でもあり、現代日本社会」的な要素での処世術的事情が多々あるようであり、時に「〇〇ではない」という意見や所感が出るのは、

この3要素の中で「健身:套路」のみで「防身:攻防」や「修身:功法」が欠けている、あるいは「防身:攻防」のみで「修身:功法」が欠けている、というところから起る理由が自ずから判ると思います。

「四撃(武術五元素)・八法・十二型」は中華民国時代の南京中央国術館で初めて行われた武術流派を超えた融合があり、中華人民共和国が1949年に建国してからは、不安定要素の高かった当時の中国国内では「以武会友」を合言葉に、全国の伝統武術家が結集し、

武術技法と武術理論として大成したものです。


※上海武術界の重鎮 王子平老師 (南京中央国術館 少林門 門長)




そして中国武術協会が発足し、伝統体育運動項目の全国普及に努めるために、「査拳」「華拳」「花拳」「紅拳」「砲拳」など伝統少林拳系拳種を総編し総合的な規範「拳術」としての「長拳」を策定しました。

そこで、この長拳において技術基礎として「四撃」「八法」「十二型」を技能標準としました。

ここでは「姿勢展:姿勢は大きく伸びやかに」「大開大合:全身を大きく開き、大きく合わせる」「翻転騰躍;翻がえり、転じ、飛び上がり、躍動する」という特徴を持つ武術拳種の総称としました。

そして統一された概念を構築し「規定長拳」という概念が生まれ「甲組長拳」「乙組長拳」「初級長拳」などの初中級、高級「套路」が総編され、その水準に相応しく「刀術」「剣術」「棍術」「槍術」が出来ました。

この「規定武術」項目では、より多くの人々の心身が健全であるためにも青少年育成のために普及が成されました。

そして中国全土に広く普及され、そこからより発展のためにも「競技」が推奨され、競技会とその出場選手が排出されるようになりました。

それから選手は「規定」よりも、より高い身体素質を向上できるようになり、その「高まった身体素質」をも評価していくために、「規定」に加えて「自選」武術項目をも設置されて行われるようになりました。

これを機会に長拳の技術要素が確定され、それは「拳」「掌」「勾」の基本手型に「弓歩」「馬歩」「僕歩」「歇歩」「虚歩」の基本歩型、そして跳躍技法は「騰空飛脚」「旋風脚」「騰空擺蓮脚」「旋子」などが加わり、

片足で支えるバランス感覚能力を誇示する平衡動作「提膝平衡」「側身平衡」「燕式平衡」が取り入れられ、確定した「長拳」技能の模範訓練プログラムや評価方式が完成しました。

そして、この時勢において進化していく水準に合わせて「刀術」「剣術」「棍術」「槍術」の技能も向上し成熟するようになりました。

ここで「現代長拳」は、この産生スタイルが結晶し確定し、現代武術人たちの日々の自己発展性において技術体系は完成するようになりました。

既にこの体育項目でもある「長拳」は中国全土、世界各国に広まり、優れた武術教育活動として広まりました。

そういう意味では「伝統功法」「規定武術」「自選武術競技」

1989年から創編され始めた「新規定武術競技:国際武術套路1・2.3」「太極拳」「南拳」「散打」

そして今現在に広められている現代スポーツ武術項目での「高難度武術競技」の順が正しい成立であり、専門家であれば、こうしたことを含めてきちんと整理して武術普及を正しく進めていくことがこれからの日本国内の「スポーツ武術界」にも重要だと感じています。

島国日本スタイル武術式は身内意識が強すぎて、海外に出ることがないことから全く知られていませんが、世界中の武術競技界の広がりの内容では「伝統功法」「規定武術」「自選武術競技」の年代別のマスターズ・ルールが国際大会では一般的に人気があって多く広まっています。


今現在にある2024年オリンピック項目の実現化(2020年東京五輪エキシビジョンも可能性はまだ残っている)へ向けた流れは、こうした積み重ねから構築されてきたプロセスがあります。

やはり長い武術ライフを充実させるトレーニングとしては「伝統武術功法(基本功)」

があって、それから「規定武術套路」での武術規格技法の体得、

競技志向があれば「自選武術項目」「伝統武術拳種や器械」

2006年から始まった難度動作を多く取り込む競技ルール「高難度競技」になります。

(日本国内では、こうした基準を知らず組織的に順番があべこべや、その場その場での場当たり的感覚でやってしまっているところがありますが、指導者たちが正しい順序で確実な技巧を改善していくことができなければ今後のレベルアップは国際競技会では環境的に年々更に難しくなると思います)

こうして、伝統的な功法から始まった本物の「中国武術」での「武術人士」になっていくためには、十二型で謂う「力要順達」「功宣純」の概念として理論も練功も踏まえて積んで具現化していくことが大切だと感じます。

今月上旬にインドネシアで開催された、武術のオリンピック項目化に向けた国際大会の長拳。