「人知れず咲く、サボテンの花は困難な状況にも耐え忍び、愛や、感情を
長続きさせる力強さや、忍耐力を象徴する花言葉で、唯一ボクサーに似合う花である。
これは、横浜さくらボクシングジムのサボテンの花達の物語である。」
会長は新人のボクシング指導をしていた。
電話が鳴った。
古株の会員が気をきかして電話に出た
「横浜さくらボクシングジムです。」
「会長、誠から電話です。」
誠は会長に電話をした。
「今日体調が悪いので練習休みます。」
「どうした?風邪でもひいたか」
「はい、熱があるようです。」
とっさにでた休む口実である。
「インフルエンザが流行ってるぞ。37度あればすぐ医者に行って診てもらう事だな」
「はい、わかりました」
と言って電話を切った。
誠は部屋で、別れた彼女の写真を見ていた。
試合が決まっていたがジムに行ってもトレーニングに身が入らない気がした。
Vサインをした彼女の笑顔が、過ぎ去った日々の喜怒哀楽、いろいろな思い出を語ってきた。
一緒にいればいろんなものが見えてくる。
離れて過ごして見ると
そんなこと全てが愛おしく思えてきた。
意を決して彼女に電話をした。
もう一度一緒に暮らさないか,
身勝手な思いを彼女は受け入れてくれるだろうか。
彼女のテーブルの上に置かれた、写真立ての中には、誠のファイティングポーズの写真を入れてあった。
そばに置かれていたiPhoneから、アンフォールドの呼び出し音が悲しい音色で流れ続けていた。
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やがて虚しく呼び出し音は止まった。