「人知れず咲く、サボテンの花は
困難な状況にも耐え忍び、愛や、感情を長続きさせる、力強さや、忍耐力を象徴する花言葉で、唯一ボクサーに似合う花。である。
これは、横浜さくらボクシングジムのサボテンの花達の物語である。」
会長がミットを受けていた。
会長のミットはキッイとの定評がある、積極的に求めてくる者は多くは無かった。
ミノルはミットトレーニングを積極的に求めてくるボクサーの1人だった。
ミノルは常に隣の席にグローブを置いた。
お茶に行った時隣の席にグローブを置く、食事行ったとき隣の席にグローブを置く、車に乗っ時隣の席にグローブを置く、赤色のグローブは、ウイニング製の8オンス。
試合の時使う紐タイプのものと同じ物を、練習の時、主にパンチンググローブとして利用していた。そのグローブを隣の席に置くのである。
気の合うボクシング仲間に山内がいた、プロテストが同じでプロになった。
練習時間が同じ時間帯である事もあり、ジムを出てからもボクシング談議で一緒に過ごすことが多かった。
その際、ミノルが何時もグローブを側の席に置くことに気付いた山内は、隣の空席にグローブを置く行為の謎を聞いた。
ミノルは、以前付き合っていた彼女がいた、そして待ち合わせしたときは、必ずグローブで席を確保して、来るのを待った。それが習慣になった。と話した。
さらに付け加えていった。分かれてみて彼女の良さを再認識した事。
気遣いが優しくて控えめ、
育った環境なのか親の躾なのか、嫌味のない女性らしさを身につけていた。
ファッションに派手さは無かったが、衣服に何時も柔軟剤のシトラスの柔らかな香りを漂わせる雰囲気があった。
男兄弟で育ったミノルにとって、特に仕草に女性を感じていた。そして何よりも愛していてくれていた事。なのに。
ミノルは、彼女を幸せにする事が出来るのだろうか、おれは自己中で勝手だなと、彼女への思いを結んだ。
「今度いつ彼女がこの席に座りに来るのか、いつ来てもいい様にですか。」山内は頷いて納得した。
今日も、ミノルの赤色のグローブは、来るあてのない彼女のために「指定席」をキープして、帰って来るのを待って居た。