「人知れず咲く、サボテンの花は
困難な状況にも耐え忍び、愛や、感情を長続きさせる、力強さや、忍耐力を象徴する花言葉で、唯一ボクサーに似合う花。である。
これは、横浜さくらボクシングジムのサボテンの花達の物語である。」
会長は事務所で毎月協会から送られてくる議事録をみていた。
「会長、女の子がボクシング見たいって言ってるんですけど大丈夫ですか?」将真が大きな声で言った。
会長は、「あー大丈夫だ。邪魔にならんとこだったらどこで見ても構わんぞ。」
将真「わかりました。そのように伝えます。」
将真は「会長が見ていいよって言ってるからここなら、いいよ」といってリングサイドの邪魔にならない場所に椅子を出してすすめた。
そして将真はいつもの様に練習を始めた。
その後、彼女は時々将真の練習見学に来る様になった。
その彼女がある日、雨に濡れてジムに駆け込んできた。
将真は、「ずいぶん濡れてるじゃないか」彼女は「うん、さっきの雨で濡れちゃった。」
「俺のTシャツ使え使えよ。
あそこに女子更衣室があるから」と2階の女子更衣室を指差した。
そしてジムの名前とロゴマークが入ったTシャツとタオルを一緒に彼女に渡した。
彼女は女子更衣室に入ってTシャツに着替えて階段を降りて来た。
「オレンジ色のシャツがとても似合ってる」将真は言葉以上に素敵に思えた。
照れて「ありがとう」と彼女は言った。
次の日、「きのうはTシャツありがとう。
天気のいい日に洗濯して返すからもう少し待っててね。」
「あのTシャツあげるよ。」と将真は言ったが
彼女は「いえいえ借りたものですから」と話題を変えた。
試合が決まったら応援行くね。
「うん」
しばらくして彼女から手紙とTシャツの入った郵便物が将真宛に届いた。
「ごめんなさい。田舎で急な用事ができて帰らざるをえなくなりました
将真のトレーニングをもっともっと見ていたかったのだけれど、ごめんなさい。
将真のTシャツをもっと着て居たかった」と書いた、手紙が添えられて居た。
袋から取り出したTシャツからは柔軟剤のハミング、ホワイトフローラルの香りが漂って来て
将真は彼女が居なくなった寂しさを噛み締めていた。