Beethoven
12月になるとBeethoven(ベートーヴェン)の交響曲第九番(通称第九)が日本中の都市で演奏されるのが慣例のようになっているが、その中でも“歓喜の歌”は、実は今ほど求められている時期はないと言われる。
その歌詞はゲーテと並ぶドイツ古典主義の代表者であるシラーの An die Freude (歓喜に寄す)が使われている。ただし冒頭のバリトンソロの歌い出しの部分はベートーヴェン自身によって付け加えられたものらしい。
なぜ今ほど求められるか、というのは“世界がいさかいの中にあっても、神の力で全ての人々はきょうだいになる”と歌われる部分があるからという。
ロシアのウクライナ侵攻も続いているし、今は専らパレスチナのガザ地区におけるイスラム組織ハマスとイスラエルの戦いのニュースばかりのようだが、ガザ地区の極限状態の人道危機は他人ごととは思えない。12月10日現在で死者数が1万8000人、そのうちの4割が18歳未満の子ども。人口の85%190万人の人たちが住む家もなくなり避難民となっているとのこと。人口の90%が食糧危機に陥っていて安心して飲める水もないと。
国連のグテーレス事務総長が国連憲章99条により安保理に人道的停戦を求めても賛成したのが13カ国(日本、フランスなど)棄権1(イギリス)反対1(アメリカ)という結果で、停戦にはなってはいない。アメリカという大国にユダヤ人で経済に多大な影響を持っている人たちが国内に幅をきかせているからだろう。バイデン大統領が来年11月に行われる大統領選挙に、その人たちの票をあてにしているからと言われている。
人間の命は何よりも尊いという神の摂理に反する今だからこそ、第九の“歓喜の歌”が世界に平和が戻った喜びの歌になって欲しいと切に願う。
ベートーヴェンが机の引き出しにいつも遺書を忍ばせていたというエピソードは、耳にしていたが、1827年に亡くなった時に、その遺書に「私の楽譜、財産のすべてを“不滅の恋人”に捧げる」と書いてあったらしい。しかし、その女性の名前は書いてなく、その莫大な遺産をめぐって親戚が騒いだとき、ベートーヴェンの弟子で親友であったアントン・シンドラーという人が色々調べたという。
その不滅の恋人(immortal beloved )、ベートーヴェンが恋焦がれた人は彼の弟の恋人ヨハンナだったのでは?そして彼女の息子カールはベートーヴェンの子どもだったのでは?などという説があるが、1995年に「ベートーヴェンの不滅の恋」という映画が作成され、それを私も見た。
その中で流れていたクロイツェルソナタのメロデイと、劇中でベートーヴェンが声をふりしぼるように語りかけていた“My half , my immortal beloved”という声が忘れられない。(確か、そう呼びかけていたような?)
Man is mortal. (人間は死を免れない)が、恋はimmortal (不滅)なのだ。