響け!ユーフォニアムの定演演奏

ある日の放課後。

奏は、梨々香とともに音楽教室の鍵を返しに滝先生のところに来ていた。


か 先生、ご相談が…

た なんですか?久石さん。

か この前、文化祭で吹いた曲についてなんですけど

た ああ、ユーフォの。いい曲でしたね。確か、黄前さんがよく校舎裏で吹いていた…

か えっ、知ってるんですか? よくご存知ですね。

た 一応、顧問ですから。(ニコ)

奏は梨々香と顔を見合わせて、

(これはイケるかも)

と思った。

か それでですね、今度の定演の演目に入れたいなって…

た ああ、そういうことですか。
  それには、ちょっと手続きが必要かもしれませんね。


か えっ?


た 楽曲というものは、著作権で作曲者の権利が保護されていますから、著作権の問題をクリアしないと、勝手には演奏できないんですよ。

吹奏楽だと、協会に届けるとか。


か そうなんですか…

  私が聞いたことのない曲なので、作曲家の方が誰なのか、まずはそこから調べないといけないかもしれませんね。


か わ、わたし、久美子部長に聞いてみます!


久美子はもう卒業してるのだが、奏は、つい口癖で部長と言ってしまうのだった。


通信アプリで久美子に相談したいことがあると伝えると、久美子は快く時間をとってくれた。

アプリの電話機能でさっそく電話をかける。

久美子とはメッセージをやり取りするよりも、直接話すのを選択する奏だった。


く 奏ちゃん、久しぶりだねえ。なにかあったの?

か 久美子部長…先輩、お久しぶりです。大学生活はエンジョイされていますか?

く え?うーん、まあボチボチかな。これでも真面目に授業受けてるんだよ。

か はい、それはもう、頑張り屋の久美子先輩のことですから、そうだと思ってました!

く 奏ちゃん…、ほめてもなにも出ないよ?


そんなやりとりも久美子の卒業後はなかなかできておらず、久しぶりだった。

この前、久美子に会ったのはいつだったか。

関西大会だった気がする。

あのときは大泣きしたなあ。

あのときも久美子はやさしく奏をハグして、頭をなでてくれた。


奏が過去を思い出していると、


く 奏ちゃん?もしもうしー

か はっ!久美子先輩、すみません!

  そ、それでですね、ご相談というのは…


奏は定演で『響け!ユーフォニアム』を演奏したいことを早口でまくしたてた。


く うーん、それは…相談案件だね!

か と、申しますと?

く 奏ちゃんは知らなかったっけ。あれは私の二年上の先輩から引き継いだものなの。確か先輩のお父さんが有名なユーフォ奏者で…


事情を説明する久美子。


か そうだったんですか。そんなに大切な曲を。これは部誌に記録すべきですね!

く え?いいのかなあ。それも含めて先輩に相談に行く?

か え?行ってもいいんですか?

く うん、ちょっと変わってる先輩だから、メールだと既読スルーされそうだし。


久美子はあすかが部を休んでいたときのことを懐かしく思い出した。

あのときも、低音の先輩がメールしても既読スルーされたってボヤいてたっけ。


奏は久美子に日程調整をお願いして、返事を待つことにした。


後日、久美子から電話があった。


く いやもう、大変だったよー。

か どうなったんですか?

く 本題に入る前にいろいろ質問攻めにあっちゃって。遊びに来るのはいいけど、相談事は予めお電話で要件をお伝えくださいって言われて。

か それで伝えたんですか?

く うん、手短にね。そしたら、即答で、作曲者のひとに滝センセが使用許可をとれば問題なし!だって。


そういうことなら、滝先生にまた相談するしかない。


か わかりました、明日にでも相談してみます。

く うんうん、たのむよー。それでさ、あすか先輩がさあ…


電話を終えて、あすか先輩なる人物が只者ではないことだけはわかった奏だった。


そのあと。

奏と梨々香はことの顛末を滝先生に伝えた。


滝は、そういうことならと、吹奏楽連盟のツテを使って、作曲家の快諾をもらい、定演で無事、奏が演奏したのだった。

客席にいた久美子が感涙してたのは言うまでもない。

ちなみにあすか先輩は、


よきにはからえ


とのことだったそうな。




エルフィは焼け野原の中で咲いた花を見ていた。すると、地面にキラリ光るものを見つけた。

それは水色に輝く水龍の鱗。


わあ。きれい。


エルフィは、それを大事そうに拾い、宝物にしようと思った。