79歳男性。農家の二男坊。6年前に奥さんを癌で亡くし長男夫婦と3人暮らし。40歳のときくも膜下出血、75歳のとき脳梗塞、2020年9月、77歳のとき右頭葉皮質下出血、その後、失語症、右半側空間無視、認知機能低下等高次脳機能障害を発症、2021年3月、腰椎圧迫骨折し、リハビリを兼ねて当デイサービスに来るようになった。

 

平行棒を使った立ち上がりや歩行訓練を行った後、手足と頸肩にお灸を施している。腰にはベルトをされており、お灸はすえていない。本人はいたって陽気で、リハビリにも積極的なため、回復も早い。

 

この男性、やはり認知が進んでいて、家族のこととかを聞いても、兄弟が8人だったり7人だったりするし、食事のことを聞いても、「あれ何食べたかな」などと自信ない回答に終始する。しかし、若い頃は相当の美男子だったらしく、施設内の利用者おばあちゃんたちにはとても人気があるのだ。

75歳女性。農家に嫁ぎ、しゅうと、しゅうとめ、3人のこじゅうとに囲まれ、農事と家事の過酷な新婚生活、さらには、その後の子育て、孫、ひ孫の世話と、休む暇のない大変な人生を送ってこられた。そして、その過酷さは、45歳ごろから肩、腰、膝と身体全体の痛みへと発展し、鍼灸院通いが始まった。当初は、家の近くの盲目の鍼灸師のところに通われたが、その方が亡くなると、遠く隣の県の鍼灸院まで片道2時間半かけて通われたそうだ。

 

私の施術はお灸中心。腰痛がひどいため、上半身を、下にバスタオル等を敷いて高くして仰臥位になってもらう。手足の要穴、膝周りに施灸したあと、伏臥位は無理なので側臥位になってもらい、腰背部に施灸。最期は座位で肩部に施灸。この治療で少しは楽になるのだが、日々改善、とまではいかない。長年かけて蓄積された慢性痛はなかなかとれない。

75歳男性。令和2年12月14日自宅の浴室で転倒、本人は大丈夫と言うも家族が救急車を呼ぶ、右尾状核に脳出血あり、言語障害などの高次脳機能障害。令和3年3月1日右中大脳動脈領域の未破裂動脈瘤をカテーテルでつぶす手術を受けた。17~18年前、顔面麻痺を発症し、そのとき鍼治療受けるも、右頸への刺入で物が見えにくくなり、ふらつきなどの神経症状を発症したという苦い経験あり。

 

2021年5月4日

初施術。手足に灸、上下肢伸展。お灸は初めても施術後、スッキリしました、と言われ一安心。

 

5月18日

二度目の施術。そのときの本人の話。昨日、病院で、返納している免許を取り直したい、と申出たところ、脳トレーニングのテストを行ってくれ、その結果、医者からは、免許取得をあきらめるように言われたとのこと。が、本人の希望が強く、8月に再度テストを実施することになったそうだ。そのテストとは、画像を見て、信号が赤だったらブレーキ、黄色だったらアクセルを外す、青だったらそのまま、これを何秒でできるかを測定する。彼の場合、黄色での反応が、遅かったのである。そして、私は、「オートマじゃなくてマニュアル車で両手両足使っていたら、ブレーキとアクセルを踏み間違えるなんてこと起こらないと思いますよ」と、自説を語った。ところが、この人、「実は、私、トヨタでオートマチック車の開発に携わっていたのです」とのたまわれた。「8月のテストで、医者を見返してやりましょう」なんて言いながら取り繕ったが、時すでに遅しである。

 

後日談:8月のテストで無事合格。ところが、家族がなかなか車の運転をさせてくれない。それでもって、いまだに娘さんの車の助手席にて外出されているそうだ。