79歳男性。要支援2。ネフローゼ、外傷性くも膜下出血の既往あり、現在は腰痛が主訴。ハリ灸は怖いということで、もっぱらマッサージを行っている。

 

この男性、55歳の時に離婚し、二人の息子は所在不明である。東京生まれだが、すぐに、母親の実家の徳島に疎開。戦後は、特高であった父が身の危険を感じ、A県I市に身を隠したため、東京には帰れなかった。成人すると、T市に住み、大手自動車販売で営業マンとして働き、退職後は、ホームセンターや警備会社のパートなどをされた。これらの経歴からなのか、自分の中に閉じこもることが多く、施設内でのコミュニケーションはうまくいっておらず、たまにスタッフに声を掛けられそれに応ずるのが関の山である。

87歳女性。要支援2。次女家族と同居。2020年10月11日脳梗塞、逆流性食道炎、高コレステロール血症、腎炎。主訴ふらつき、上腹部のつまり。医者から腎臓病は治らぬ、と言われ、大変気にしておられる。施術は太極療法のお灸に、復溜、天柱、風池、完骨の鍼。

 

ご主人、前立腺肥大で入院、その3週間後に死亡。死因は院内感染による肺炎だそうだ。入院するまでは健康自慢のご主人で、いつも寝込んでいた本人に、おまえは早死にするね、と言っていたそうだから、人生分からぬものである。

 

この女性、2020年11月から我が施設で施術を行っている。当初は、歩行が乱れ、意識ももうろうとされていた。しかし、我が施設に通い出して数カ月、かなり体調が戻った。脳梗塞発症以前の元気さを取り戻されている。腎臓病特有の浮腫も見られず、食欲も旺盛である。ただし、ふらつきが収まらぬ。これが一番の悩みの種。こちらも、あれやこれや、いろいろなツボを攻めてやってはいるが、なかなか改善しない。訴えも多く、なだめるのに言葉を尽くすのだが、本人はもどかしそうだ。はた目から見ると元気そうに見える。機能訓練にも積極的に取り組まれているし、周りの人とのコミュニケーションもうまくいっている。ぶつぶつ文句を言える間は元気なのかもしれない。

73歳男性。要介護1。この町で生まれこの町で働き今に至る。両親は沖縄県出身。大脳皮質基底核変性症(指定難病7)による高次脳機能障害、左空間無視、言動緩慢、表情に乏しく、軽度認知症あり。

 

本人、体験でマッサージを受けるも、くすぐったかったらしく、以後マッサージを拒否。2021年6月1日、初めて私が担当し、お灸を施す。以前に鍼の経験はあるが、お灸は初めてとのこと。灸をすえ始めると、線香の煙を吸い、「いい香りがする」とおっしゃったので、お灸は合うと思った。手足と頸肩の要穴に施灸しながら、沖縄の話で盛り上がる。お墓での宴会の風習、オリエントビールのまずさ、豚足のあぶらっこさなど。笑顔も見られ、表情が少しだが明るくなった。