新型コロナウイルス 治療薬・ワクチンの開発動向まとめ【COVID-19】(3月6日UPDATE)
治療薬
米国の臨床試験登録サイト「CrinicalTrials.gov」によると、現在、COVID-19を対象に臨床試験が行われているのは、▽抗ウイルス薬レムデシビル(米ギリアド・サイエンシズ)▽抗HIV薬ロピナビル/リトナビル配合剤(米アッヴィの「カレトラ」)▽抗インフルエンザウイルス薬ファビピラビル(富士フイルム富山化学の「アビガン」)――など。日本では、国立国際医療研究センターの研究班による観察研究として、これら3種類の薬剤の投与が行われています。
日本感染症学会は2月26日、3種類の薬剤のうち国内で承認されているカレトラとアビガンをCOVID-19に使用する際の留意点などをまとめた暫定的な指針を公表しました。指針によると、抗ウイルス薬の投与対象となるのは、50歳以上の患者と、糖尿病、心血管疾患、慢性肺疾患、慢性閉塞性肺疾患のある患者、免疫抑制状態にある患者など。いずれも、低酸素血症を発症して酸素投与が必要になった段階で投与を検討するとしています。
治療薬
武田薬品工業は3月4日、COVID-19の治療薬として、原因ウイルスSARS-CoV-2に対する高免疫グロブリン製剤「TAK-888」の開発を始めると発表しました。TAK-888は、回復した患者の血漿から採取した病原体特異的な抗体を濃縮したもので、これを投与すると患者の免疫系の活性が高まり、回復の可能性が高まることが期待できるといいます。
武田はTAK-888の開発に向けて世界各国の規制当局と協議を進めており、ほかにもCOVID-19に有効な薬剤がないか、発売済みの製品や新薬候補ライブラリを探索しています。
米ファイザーも新たな抗ウイルス薬の開発を進めている模様。ロイター通信は3月2日、米ファイザーがSARS-CoV-2に抗ウイルス活性を示す化合物を特定し、第三者機関と化合物の評価を進めていると報じました。ほかにも、米リジェネロン・ファーマシューティカルズが、COVID-19に対する抗体医薬の開発に向けて米保健福祉省(HHS)と提携。米アルナイラム・ファーマシューティカルズも3月4日、米ビル・バイオテクノロジーとSARS-CoV-2を標的とするsiRNAを開発すると発表しました。
ワクチン
COVID-19を予防するワクチンの臨床試験も近く始まる見通しです。米バイオベンチャーのモデルナは2月24日、開発中のコロナウイルスに対するワクチン「mRNA-1273」の治験薬を初めて出荷したと発表しました。米NIAIDが近くP1試験を始める予定です。
CrinicalTrials.govに登録されている情報によると、mRNA-1237のP1試験は18~55歳の健康な男女45人を対象に実施。ワクチンを4週間隔で2回投与し、安全性と免疫原性を評価します。
新型コロナウイルスに対するワクチンの開発をめぐっては、ノルウェーに本部を置く「感染症流行対策イノベーション連合(CEPI)」が、▽米イノビオ▽豪クイーンズランド大▽モデルナ・NIADI▽独キュアバック――とパートナーシップを締結。英グラクソ・スミスクライン(GSK)は、アジュバント技術の提供でCEPIの開発プログラムに協力しています。GSKはさらに、中国のクローバー・バイオファーマシューティカルズとも研究協力に合意。クローバーにもアジュバント技術を提供し、同社創製のワクチンの大量生産をサポートします。
このほか、仏サノフィや米ジョンソン・エンド・ジョンソンなどもCOVID-19に対するワクチンの開発を表明。ロイター通信は3月5日、ファイザーが独ビオンテックとワクチンの共同開発を検討していると報じました。
日本企業では、アンジェスが3月5日、大阪大とDNAワクチンを共同で開発すると発表。タカラバイオも製造で協力します。アイロムグループのIDファーマは、中国・復旦大付属上海公衆衛生臨床センターとワクチンの共同開発で合意。両者はセンダイウイルスベクターを使った結核ワクチンを共同開発しており、その経験を生かして新型コロナウイルスに対するワクチンの開発を目指すといいます。
(前田雄樹)