前回と同じ会社に勤務し始めた最初の秋。
時々しか使わない場所の排水管の排水が出にくくなった。
直径約15センチ、長さ約4メートルほどの塩ビ管で会社では詰まるような物は使っていない。
管の中に針金の八番線が外の下水口まで繋がっている。
通水が順調なときは気にもならなかった針金である。
塩ビ管の脇に小さな溝が掘られている。何のことはない毎年冬には管が詰まるからとのこと。
秋が深まると完全に詰まった。針金も動かなくなっている。
毎年そうだから・・・と・・ 社員の女性達は気にもとめていない様子である。
これは何かが管に入り込み、冬越ししているはずと見当は付いた。
周りは全て田んぼで、生き物には事欠かない。
工場の中は火力を豊富に使っているため冬でも暖かい。
直計15センチもある塩ビ管に隙間無く入れる物と言えば「アレ」しかいない。
女性達に話すとおそらく側に寄りつかなくなるはずである。
春になり針金の動きを慎重に観察していた。
4月中旬すぎ、田んぼに水が張られる頃、朝 針金が動く・・・
出た~~~すぐさま窓の外を見たら、窓下の畦いっぱいに、いる うじゃうじゃいる。
冬眠から目覚めた蛇の大群が絡み合っている。昼頃にはすべていなくなった。
蛇たちにとっては貴重な冬眠場所である。
時々は工場内部に挨拶に来るが、いつも穏便にお引き取り願う。
勤務していた4年間、女性達には言わず終い。みだりに怖がらせると後が大変。
男一人だけの工場では、波風は立てぬに限る。それでなくても女性の目は全て自分に向いていた。
品行方正でなければ、直ぐに本社に報告される。くわばら、くわばら。
今この会社はない。建物だけが昔の名残をとどめている。栄枯盛衰夢の彼方に・・・