孤独という名の嘘
11月の新刊、誉田哲也『たとえば孤独という名の嘘(2025)文藝春秋』。警視庁公安部外事課に所属する佐島は、大学時代に友人と競った(今は亡き)女性と瓜二つの矢代愛美(徐若晴)を中国のS(スパイ)と知りつつ泥濘のごとき日々を送っていた。その矢代愛美が絞殺体で発見され、なんと亡き女性を競った友人が殺人犯として逮捕される。
作品は全5章で構成され、それぞれ主人公を替えて中国のSである徐若晴をモデリングしてゆく。ただし事件は輾転、追う方も追われる方も虚実不定。嘘に嘘を上塗りするような展開に。
誉田哲也:たとえば孤独という名の嘘(2025)文藝春秋
第1章(2021.12)から第2章(2024.02)の間隔があり過ぎるのを考えると。短編作品として完結させたものの、後に短編連作の長編として再構築したようだ。最近の誉田哲也らしい政治向きな(中国からのサイレント・インヴェージョン)をモチーフに緊迫感ある内容に仕上げている。
藤 蔓
デヴュー当時は映像化ができないようなヴァイオレンスな描写を厭わなかった作者も、大ヒット作『ストロベリー・ナイト』姫川玲子シリーズ辺りから、やや穏健に。近年は安保防衛などを扱った刑事ものが多くなってきて、現在の国防問題ともリンクしている。しばらくはこの路線でいくのだろうか?
冬日に
日本のハードボイルドは刑事ものが主流だが、古めの私立探偵ものを愛好するせいか多分に「孤独な探偵」の内実・内声が描かれるシリーズに惹かれる。わが国の私立探偵ものではリアリティにかけるからね。致し方ないのだが。





