mizusumashi-tei みずすまし亭通信 -31ページ目

リチャード・ブローティガン

 

先週末、久しぶりにZ古書店を覗いたら、リチャード・ブローティガン最後の詩集 『東京日記(1992)思潮社』をみつけて。彼の(藤本和子さんが翻訳した)文体は、70年頃に登場する村上春樹ら多くの作家に影響を与えた。文体は軽やかでいてあてどのない痛みを身につけはじめたのかな。

 

R.ブローティガン:東京日記(1992)思潮社

 

ぼくは車の窓から見る

時速一〇〇キロ(六十二マイル)

男がとても慎重に

自転車のペダルを踏んで

田んぼのあいだの狭い道を

   進んでゆくのが見える

数秒でかれは消えてしまった

もう記憶の中のかれがあるばかりだ

かれは時速一〇〇キロの

記憶のインクをこすった跡に

変わってしまった

  R.ブローティガン:東京から高速道路で大阪へ向かう 

  浜松 1976年6月7日 

 

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ちょうどこのころ、わたしも東京で暮らしていたから、どこかでブローティガンとすれ違っていたのかも。などと思ったけれど、当時はブローティガンの作品を知りもしなかったから、電車で隣りあわせてもわからなかったろーな。なんとなく当時を思い出しながら、知らず詩集と記憶を読みあわせていた。

 

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『東京日記』には感傷が影のように貼りついていて、これは日本の湿度が影響しているのかなとも過ぎったが。8年後の1984年、彼はカリフォルニアの自宅でピストル自殺している。イラストは今年ちくま文庫で復刊された藤本和子さんによる評伝『リチャード・ブローティガン 』の表紙絵に重ねて描いた。