John Stellan Skarsgård
スウェーデンの警察小説、レイフ・GW・ペーション『許されざる者(2010)創元推理文庫』翻訳初出は2018年でCWA賞、ガラスの鍵賞など5冠に輝く。スウェーデンの警察小説といえば、古くはマイ・シューヴァル&ペール・ヴァールー夫婦による「マルティン・ベック(1965-75)」シリーズ全10作が記憶に深い。近年スウェーデンの警察小説の翻訳が盛んに。
『許されざる者』は国家犯罪捜査局・切れ者の元局長ヨハンソンが脳梗塞で倒れ、一命をとりとめたものの半身不随となる。その折、彼の主治医から、時効を迎えたばかりの25年前の少女暴行殺人事件の手掛かりを得る。頑固でプライドの高いヨハンソンは、不自由な身体に癇癪を起こしつつも捜査を開始するのだが。
レイフ.GW.ペーション:許されざる者(2010)創元推理文庫
冒頭、脳梗塞により怒りぽくなったヨハンソンの言葉が荒っぽくて「おやおや」と思ったが、症状が改善するとともに言葉遣いも平常に戻り一安心。そうした会話と、会話に続いて語られるヨハンソンの内声との対比が絶妙に面白く、一筋縄で括れないヨハンソンの性質が見事に造形される。
加えて、病気を抱えたヨハンソンの定年後の泡沫うたかたともいえる残日が露わになってくるのだが、語り口は乾いたユーモアに満ちていて陰惨さを感じさせない。さて、映像化するにあたって、愛すべき頑固者ヨハンソン元長官には地元スウェーデン出身の俳優ステラン・スカルスガルドにお願いしよう。