久生十蘭。顎十郎捕物帳:映画 おしゅん捕物帖 | mizusumashi-tei みずすまし亭通信

おしゅん捕物帖

 

月丘夢路主演の映画『おしゅん捕物帖(1955)日活』の原作は谷川早 はやし(久生十蘭)『顎十郎捕物帳/都鳥』。原作では馬の尻尾斬りが発端だが、映画では若い女性の髷が斬られる事件が相次いで、岡っ引の娘おしゅん(月丘夢路)が病気の父(菅井一郎)に代わって犯人探しとずいぶん改変されている。

 

谷川早名義で書いた久生十蘭『顎十郎捕物帳』は戦前の作品で、主人公の仙波阿古十郎は顔の下半分が顎という異相の捕物名人、顎が長いことから顎十郎と言われる。北町奉行所与力の叔父の家に寄宿し、同心例繰方撰要方兼帯を拝命するがほとんどやる気がない。頃合いをみて難事件を解決し叔父の機嫌をとる。

 

おしゅんとお光(南寿美子)

 

『顎十郎捕物帳』は昭和14〜15年まで雑誌『奇譚』に連載された。他に雑誌『新青年』に一編掲載、全24話が執筆された。戦争間近というのに、なげやりで怠惰な主人公というのも、なかなかなキャラクターで大ファンです。

 

ところで、下っ引きチョロ松役で(誰かと思ったら)多々良純だね。出演時は30代の終わりころか? 私が知る多々良純にしては若すぎるけど懐かしい。おしゅんを助ける浪人前田重四郎は三國連太郎で、こちらも誰かと思いましたね。

 

谷川早:顎十郎捕物帳(1947)鷺ノ宮書房

都筑道夫:新顎十郎捕物帳(1984)講談社

 

『顎十郎』の隠れファンは多いようで、都筑道夫はシリーズを書き継いだが、名人都築をしてやはりオリジナルを凌ぐのは難しいか? 鷺ノ宮書房版は以前ヤフオクに登場した折には落札価格が5000円越えで、早々に入札から脱落。ネット古書店では現在12000円の値付けになっている。装釘は中一弥だと思う。