神谷玄次郎捕物控。これからの捕物帳はどーなる? | mizusumashi-tei みずすまし亭通信

神谷玄次郎捕物控

 

前回ブログで捕物作家クラブの面々が語りあったのは「これからの捕物帳をどうする?」だった。銭形平次、人形佐七、殿さま侍が活躍する捕物帳は「理想としての江戸」を類型化しファンタジーの世界を再構築すること。これは戦争に向かって出版統制が厳しくなるなかで、捕物帳は「時局についてはいっさい語らず」逃避文学化することで生き延びるためだったのですが。

 

時代は変わろうとしている。捕物帳よりも(現代の様々な諸相を取り入れた)探偵小説の人気が高くなってきて、捕物帳も短編中心から長編化へのシフトなども提案される。となれば、いつまでも理想郷に留まるわけにもいかずといったところでしょうか。そこで登場するのが探偵小説と捕物帳のハイブリッドです。

 

藤沢周平:神谷玄次郎捕物控

    彫師伊之助捕物覚え

 

藤沢周平『神谷玄次郎捕物控(1975-80)小説推理:双葉社』と『彫師伊之助捕物覚え(1979-85)新潮社』において、藤沢周平は1960年代に移入されたハードボイルド的手法と捕物帳を交配して、現代の諸相を作品に組み込むことで捕物帳を新しいステージに押しあげることに成功した。

 

そして、藤沢周平はここで「短編連作(全体としては長編)」の形式を採用する。一話完結の短編に加え、作品全体としては別の事件を扱うことで内容を複層化し、深く暗い疑惑の流れを通底させることで、多角的で現代的な視点を加えた。

 

ということで「捕物帳」はシャーロック(半七捕物帳)とルパン(銭形平次捕物控)を母体に、さまざまな変革を経てここまできたわけですが、では「これからの捕物帳」はどーなるのか。