アガサ・クリスティ。なぜエヴァンズに頼まなかったのか? | mizusumashi-tei みずすまし亭通信

なぜエヴァンズに頼まなかったのか?

 

地上波ドラマで『なぜエヴァンズに頼まなかったのか?』を放送していて、その原作(1934/昭9年)がアガサ・クリスティ。クリスティに「こんな作品があったんだ」ということで、田村隆一訳の早川ポケミス版(1959)を読んだところ、おおむね原作通りに映像化されていましたが、原作にない謎の男(ニコラス・アズベリー)は邪魔だったかな。

 

伯爵の娘フランキーと牧師の息子・現在無職のボビーのコンビによるラブコメ展開で、クリスティにしては珍しいキャラクター。そのボビーは、転落死した男が遺したダイイング・メッセージ「なぜエヴァンズに頼まなかったのか?」を聞いたことから事件に巻き込まれ、詮索好きのじゃじゃ馬娘フランキーにそそのかされて探偵を始めるのだが…

 

北森鴻:なぜ絵版師に頼まなかったか(2008)光文社

 

北森鴻の明治もの連作ミステリ『明治異国助人疾る!」の上掲作品のタイトルが(内容は全然クリスティとは別物ですが)クリスティをオマージュしていたのですね。ようやく腑に落ちました。

 

初出は世界探偵小説全集18 アガサ・クリスティ篇(第2集)『別冊宝石 55号(1956.05)』に平井イサク訳で収録され、単行本、上記の早川ポケミス版(1959)では田村隆一によって改訳されている。ラブコメ調の軽いノリを楽しみたい作品。ドラマではビクトリア朝の残照を描きだしていて見どころになっている。