ピエール・ヴェリー。絶版殺人事件 | mizusumashi-tei みずすまし亭通信

エルキュールポアロ

 

フランスの作家ピエール・ヴェリー(1900-1960)の『絶版殺人事件(1930)論創社』。ピエール・ヴェリーといえば、探偵&弁護士ルピックが活躍するシリーズで名前を知るくらい。タイトルから古書ミステリかと思い図書館本を借りだしたものの違いましたね。原題は「バジル・クルックスの遺言」で、日本での初訳が『絶版殺人事件』なことから旧題を踏襲したとのこと。

 

舞台はスコットランド・ダンバートン。アルデバラン号の船内で密室殺人が発生し、船長が犯人と思われたが多くの謎が残されていて。といった本格推理で、現地警察とともに引退した図書館の古文書管理人で謎解きが趣味のフランス人・トランキルが捜査に参加するというもの。

 

ピエール・ヴェリー:絶版殺人事件(1930)論創社

 

トランキル氏は「敏捷でおどけた蜥蜴に、自然のいたずらで余計な髭が付け足された(p163)」やせた小男で、ちょっと「160㎝ほどの小男で、緑の眼に卵型の頭、黒髪でぴんとはね上がった大きな口髭。山高帽を被り、三つ揃いの仕立て服に蝶ネクタイにエナメルのブーツを履く」エルキュール・ポアロを連想する。

 

ヴェリーは本著で第1回冒険小説大賞を受賞。最初の翻訳は上野三郎訳で雑誌『青年(1937.11)』増刊号に掲載された。スコットランドで活躍する仏人トランキルの登場の背景として、当時、スコットランドは英国に対抗すべくフランスと友好関係を築いていた。当時にあっては斬新と思われるラストが用意されている。