横溝正史。人形佐七捕物百話.01 | mizusumashi-tei みずすまし亭通信

横溝正史:人形佐七捕物百話(1942)八紘社杉山書店

 

昭和17年発刊の杉山書店版『人形佐七捕物百話』全3巻の内、入手した第3巻は春陽堂版から漏れた三編の改稿版以外はすべて書き下ろしとのこと。入手本は貸本だったようで本文は糸綴じの補強がなされ奥付は外されている。表紙の剥げが目立つのは残念だが稀覯本である。装釘表紙絵は今村恒美

 

『人形佐七捕物帳』の初出は『講談雑誌(1938.01)羽子板娘』で『定本人形佐七捕物帳(2019)春陽堂書店』によると、シリーズで全180編が確認されている。なお改稿版が多い。小林信彦編集の『横溝正史読本(1979)角川文庫』には、戦後『佐七』は書かないつもりだったが、戦争で止められていた作品が戦後になって雑誌掲載されたため続けることになったとある。

 

  

横溝正史:お染めの嘆き(1939)オール讀物

 

『オール讀物(1939.01)新年特別号』初出時のもので、挿絵は神保朋世が描いている。

 

主人公岡っ引の佐七は寛政6年(1794)生まれ。京人形のような美男子ぶりから「人形左七」と呼ばれる。町娘たちを騒がせ女好きから、恋女房のお粂を始終やきもきさせている。名前はマキノ映画「佐平次捕物帖」と『半七捕物帳』の半七を合わせた。佐七の年上女房お粂は寛政5年(1793)生まれ。元花魁で美女。佐七とは事件を通じて知り合う。『半七捕物帳』の半七の妹の名をそのまま借用した wiki とある。

 

小林信彦編集:横溝正史読本(1979)角川文庫

 

小林信彦と横溝正史の対談形式で、横溝の編集者時代の交友話などおもしろい話がてんこ盛りで貴重な一冊。さすが小林信彦で、話の引き出し方が上手い。ただ「金田一耕助」についての会話が中心で「人形佐七」については僅かな記載(無いに等しい)にとどまる。ちょっと残念。