今村恒美。江戸暦渡世繪姿.01 | mizusumashi-tei みずすまし亭通信

吉原の狐舞 今村恒美 挿絵原画

 

 少し前に、江戸時代の「ぼうふら売り」を紹介した。江戸時代はさまざまな商売や物売りがあって、当時から多くの絵師によって収拾され描かれてきた。その量はもはやジャンルとして成立していて風俗画の一大勢力となっている。

 

特に物売りは季節のイベントであり庶民の生活に密着していた。昭和の挿絵画家、今村恒美の『吉原の狐舞』は鈴本(すずもと)演芸場の出し物案内の表紙絵の原画で、懐かしむように江戸の風俗・物売りの挿絵をシリーズで描いている。

 

 

今村恒美 挿絵原画

 

戦後では挿絵画家の三谷一馬が「職業尽くし絵」を専業のように描いていて多くの著作が残されている。その多くは中公文庫にまとめられネット古書店で容易に集めることができるのは有難い。三谷は描くために風俗画に関する資料を収拾、後にこの資料を提供した功績により吉川英治文化賞を受賞している。

 

三谷一馬:彩色江戸物売図絵(1996)中公文庫

三谷一馬:戦前の雑誌挿絵原画(出典未詳)   

 

お小姓か若衆を(多分グラフ雑誌用に)描いたと思われる挿絵原画は、いささかタッチが生硬なところから三谷の若い頃の作品と思われる。