映画 Maigret の Jade Labeste
ジェラール・ドパルデュー主演の映画『メグレと若い女の死』原作の新訳本が映画上映にあわせて出版された。旧訳より数段読みやすくていいなとは思う。しかし、以下は身元不明の遺体が発見され駆けつけたメグレの「かなり複雑な事件になるのでは」という予感とともに綴られた新旧訳文の比較なのだが…
旧訳:うしろに投げ出された褐色の、非常に柔らかな髪は緩やかに波打っている。化粧は雨のために少しはげていたが、それは彼女を一層若々しく魅力的にしていた。
新訳:頭のうしろになであげた柔らかな褐色の髪が、ふんわりと波打っている。化粧が雨に濡れてわずかに滲んでいるけれど、老けて見苦しい感じはしなかった。むしろ若々しい魅力が引き立っているくらいだ。
G.シムノン:メグレと若い女の死(2023)早川書房
おそらく新訳の方が原典に忠実に訳されているのだろうが(寡黙で知られる)メグレの目線での描写とするならば旧訳の簡潔文の方が、より〝らしい〟感じがしなくもない。まぁ、なかなか訳文の良否判断は難しい。
イラストは、その身元不明の若い女性を演じたジャド・ラベストを描く。映画も観たいところなのだが当地での上映はないようなのだ。残念。