斎藤美奈子。中古典のすすめ | mizusumashi-tei みずすまし亭通信

 

斎藤美奈子の新刊本『中古典のすすめ(2022)紀伊国屋書店』は1960年代〜90年代の、当時のベストセラー50作品を改めて読み直し、読みどころやお勧め度などを提示する。斎藤美奈子は同様本が多数出版されているので購入は迷ったが、とりあげられた書籍が(懐かしい)既読本が多かったので、つい。

 

例えば、高野悦子『二十歳の原点(1971)新潮社』は、彼女が1969年6月24日未明に鉄道自殺するまでの半年ほどの日記をまとめたもので、内容は案外に学園闘争の記載が多い。自殺の原因は失恋や精神的バランスを欠いたせいとも言われているが不明。ともあれ夭折者の著作の持つ伝染力は強い。

 

私も当時知人に読むように勧められた。斎藤によると、この日記は人に読まれることを想定していなかったもので、形式だけに限れば林芙美子の『放浪記(1930)』に近いが、二十歳の原点が「独りであること、未熟であること」そのものに帰結しており「彼女が出版を望んだとは思えない」と章を結んでいる。

 

『二十歳の原点』は現在に至るまで200万部のロングセラーだそうで、夭折した少女の独白はそれだけで普遍的な共感をひきだせるものなのだろうか。