松田華音。リトミカ・オスティナータ | mizusumashi-tei みずすまし亭通信

Eテレで井上道義指揮N響による珍しい伊福部昭作曲、ピアノと管弦楽のための「リトミカ・オスティナータ」をピアノ松田華音で演奏していた。伊福部昭(1914-2006)はもっぱら「ゴジラのテーマ」で知られるが、もうちょっと演奏されてもよくないか? そのピアノ独奏を担当した松田華音を聴くのは初めて。

 

映像からはさすがに音量は不明ですが、なかなかキレのあるパワフルな演奏に加え、テクニカルで集中度の高さが魅力的なピアニストです。若干18歳でグラムフォンと契約した実力者で、現在のところ留学したロシア音楽を得意としているようです。一度生演奏を聴いてみたいですね。

 

 

R.D.ウィングフィールドの〝フロスト警部〟シリーズ第6作最終巻『フロスト始末(2008)創元推理文庫』を読む。警察小説史上(おそらく)最高に下品で猥雑なシリーズで、無能にして高圧的な上司には慇懃にして無礼に対し、同僚部下には下卑たダジャレを連発。かつ、フェミニズムのなんたるかを解していない。

 

『始末』では、少年少女が相次いで失踪、捜索が開始されるやごろごろと死体や、人体の一部が見つかるなどデントン署は混乱の極みに陥る。いつものように追いまくられるフロストは、満足に睡眠や食事も取れぬありさま。とりあえずはダジャレの山を築きながら押し寄せる事件の津波を掻き分けていくのだが…

 

英ミステリらしくドタバタコミックに陥ることなくそこはかとなくペーソスを振りまきながら、事件それ自体は割合冷徹に描いていて、この辺りはウィングフィールドの面目躍如といったところである。作者(1928-2007)は先年、癌により亡くなっており『始末』が(残念ながら)最後の作品となった。