E.マッキンティ。ザ・チェーン | mizusumashi-tei みずすまし亭通信

エイドリアン・マッキンティ『ザ・チェーン連鎖誘拐(2019)ハヤカワ文庫』は意表を突いたプロットによる作品。子どもを誘拐されたら、誘拐された被害者が新たに他の子どもを誘拐することで自分の子どもが返される。被害者が加害者になることでしか子どもが帰ってこないのだ。

 

 

そして誘拐が行われるたびに、この犯罪システムを構築した人物にはビットコインで身代金が振り込まれ、その一部が誘拐した家族に還付される。被害者は加害者となり還付金によって口封じされるという怖るべき仕組みになっている。主人公シングルマザーのレイチェルは娘のカイリーを誘拐され

 

自身もまた他人の娘を誘拐し返すことになる。やがて、元夫の兄(元軍人の)ピートの助けを借りてこの連鎖を断ち切ろうとするのだが… ところが、このピートもヘロイン中毒で役に立つような立たないような状態で、それでもレイチェルは気丈にシステム犯罪者に立ち向かっていく。

 

作者マッキンティは話題になったダフィ・シリーズを6作まで発表すると「作家稼業は割りに合わない」と廃業してしまった。それを惜しんだ作家仲間が本作『チェーン』を書くように勧めたとあとがきにある。ただ、本作品はダフィ・シリーズに比べるとやや粗さが目立つのが残念。このまま筆を措くのか?