茂田井武と小栗虫太郎。イッセー尾形 | mizusumashi-tei みずすまし亭通信

 ドラマ〈アシガール〉の爺・天野信茂

 

昨ブログの続き。ドラマ〈アシガール〉の爺こと、天野信茂役のイッセー尾形。カルカチュアライズされた配役には欠かせないバイプレーヤーで、少女コミックが原作の戦国ラブコメの脇役にぴったりだった。イッセー尾形も当時、そのあたりを充分理解して演じたと述べていた。

 

本の本(04,11 1976)彷書月刊(12 2000)

 

古書の情報雑誌「本の本」については以前書いた。久しぶりに書架からひきだしたところ山下武「茂田井武と小栗虫太郎」という記事が眼についた。茂田井は後に童画家として知られるが、昭和10年ころ当時博文館にいた水谷隼の周旋で、2年ほど小栗虫太郎の世話になった。

 

そのころ描かれたと思われる茂田井「退屈画帳」が小栗家に遺されていて、そこには音楽学校在学中にカリエスを病み15歳で亡くなった小栗の娘・英子の姿が描いてある。とてもこころ優しい少女だったそうで、放浪が身についた茂田井だったが、その気質を愛した小栗は英子の婿にと話していたらしい。

 

後に谷内六郎ばりの絵を描く茂田井の「退屈画帳」は鬱々と、天上に吊るされた電燈に浮きでた英子の横向きの座像が天女のような姿に胸が痛む。昔の古書雑誌は本にまつわるこうした些末な内容の記事がてんこもりでなかなか手放せず、現行の雑誌マガジン「ダ・ヴィンチ」と真逆な編集なところが面白い。