葉室鱗の散り椿。そこは堪えて… | mizusumashi-tei みずすまし亭通信

 映画 散り椿(2018)

 

葉室鱗原作「散り椿」が黒沢組の生き残り木村大作監督の下で撮られ評判がいいようだ。気になるキャスティングで(肝臓先生の)麻生久美子、黒木華を姉妹でというのですからね。映画は未見なので意見は述べないが、予告映像を見る限り、岡田の太刀捌きの速さは魅力ですが、太刀に重みが感じられないのがね。

 

葉室鱗:散り椿(2012)角川文庫

 

原作は〝回覧本〟が廻ってきた。かつて(戦後の)時代劇が描きだしたものは〝生きざま(矜持)〟であったものが、最近は〝愛〟になったのはいいにしても、本作はベタな夫婦愛を押し通している。時代小説がファンタジーに分類? それも時代なのかと思うけれど時代劇オールドファンには、ちと辛い。

 

作中、幾つか伏線が織り込まれるのだが(ミステリファンからすると)みえみえで分りやすすぎるのが気にかかる。また、最後に坂下里美(黒木華)が瓜生新兵衛に恋情を洩らすところ「そこは堪えて…(心に秘めたまま)」と願うのは、時代劇オールドファンの悲しき習性でありましょうや。