金子みすゞ。磯田光一の鹿鳴館の系譜 | mizusumashi-tei みずすまし亭通信

 金子みすゞ

 

北森鴻の(残り少なくなった)読み残し本を落ち穂拾い。「闇色のソプラノ」に、あきらかに金子みすゞをモデルにした樹来たか子の詩に魅せられた人たちが邂逅錯綜し、新たに起きた(臨死の病人を殺害するという)不可解な事件とともに彼女の自死の謎に近づいていく。自装カバーは金子みすゞで。

 

 北森鴻:闇色のソプラノ(1998)文春文庫

 磯田光一:鹿鳴館の系譜(1983)文芸春秋

 

ゴールデンウィークは天候がもうひとつということもあって、障子張りに部屋掃除、蔵書を整理しつつ読書三昧。作家やカテゴリーごとに書架の本を並べ替えたりしていると時間を忘れてしまう。磯田光一「鹿鳴館の系譜」は整理中に再発見したもので、拾い読みしている内に夜も更けて…

 

磯田「鹿鳴館」によると、雨が降ると泥濘化する街路を、大正7年に来日した米人サミュエル・ヒルの進言によってアスファルト舗装されはじめ、人々は雨の日でも余裕を持って散策ができるようになり、ここにいたってようやく詩情をもって〝都市の〟雨を詠えるようになった。

 

 巷に雨の降るごとく

 われの心に涙ふる

 かくも心に滲みいる

 この悲しみは何ならん?

 

堀口大學の訳詩集「月下の一群(大14)」に載るヴェルレーヌの訳詩が受け入れられたのには、こうした都市整備が進んだことによる。「〝街の〟雨情」も輸入品でありました。自装カバーには鹿鳴館を設計したジョサイア・コンドルの別の建物の設計図を使わせてもらいました。