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梅原北明訳:さめやま(1930)大洋社書店
フランスの作家フェリシアン・シャンスール「日本の人形」を、梅原北明・酒井潔が翻訳編集したもので、シャルパンティエ社(1912年11版)を翻訳したものです。フランスの〝日本趣味〟を反影したもので「豪商の愛娘サメヤマが家運の衰微から身を吉原に沈めて、一世の名妓として謳われながら、真実の恋にあこがれ、たまたま来日した美貌のフランス少壮仕官(ポール・リヴリヰ)と会して、哀々胸を裂く悲恋に泣く劇的場面を経て、ついに高貴の夫人となって家運の素志を貫徹する」物語です。
いわゆる「フジヤマ・ゲイシャ」を描いたもので、当時のフランス人の日本への憧憬や妄想が入り交じった奇妙な作品です。しかも、梅原北明らはヘタに手を加えないで、変な記述そのままに翻訳している。序文に「異国趣味と。空想の乱舞によって美化された、身も魂もとろけるような甘美な夢幻境で、輝やかしく、しなやかな裸女の肉の香を満喫する愉悦を感じる」とあるから春本に分類されるのだろうが、伏字ばかりで満喫も愉悦も感じられない。
随分いいかげんな明治初期の遊郭風俗はそれなりに微笑えるが、いい加減ご都合小説がフランス本国で版を重ねたところに(いまさら読書する)意味があったりするのかもしれない。よく判らないけど。ともあれ、こうした本を大まじめに翻訳して出版した訳者・出版社にエールを贈りたい。事務所近くの古書店で見つけて、つい買ってしまったのでした。でも拾い読みするばかりで、いまだ最後まで読めていません。