坂口安吾の明治開化安吾捕物帳.02 | mizusumashi-tei みずすまし亭通信
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 坂口安吾:明治開化安吾捕物帳(1983)六興出版

最初の(たぶんに角川書店が仕掛けた)坂口安吾ブームの折りの六興出版による新版で、2代3代広重の錦絵による装幀が似合っている。こちらは最近あまりに状態がいい(すべてに帯付)古書を見つけたので思わず購ってしまったのでした。以前の持ち主は保存用にしていたようで(しおり紐が巻かれたままで)読んだ形跡もない。もっとも、現在でも同じ装丁(タイトルの書体は違っている)で沖積舎から出版されているので、希少性は皆無ですが。

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戦後の混乱期と、明治開化のどさくさ状態に近似性を感じたのだろうと思われるが、明治時代が〝探偵ミステリ〟の舞台に使われるようになる。戦後は坂口安吾あたりが早い口だろうが、この系流は村上元三「捕物そば屋」、島田一男「開化探偵帖」、そして一連の山田風太郎の「明治もの」に昇華される。逆に戦前は幕末を舞台にした大衆小説が多く、さすがに明治ものとなると元勲の生き残りなどもいて描き難かったのだろう。昨ブログに書いた〝不敬罪〟問題もあってね。

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 坂口安吾:明治開化安吾捕物帳 帯

帯には大衆文学研究の尾崎秀樹(ほつき)、坂口の作家仲間花田清輝、そして坂口自身の文章の一部がコメントに引かれている。こうした帯も時代によってさまざま掛けかえられ、当時の諸相を感じさせるからあなどれない。まぁ、ないよりあった方がいいだろうといった、貧乏人根性の所為ではありまするか。