あまとりあ:第2—3巻(1951.04-05月号)
あまとりあ:第6巻-特別号(1951.08月号)
さて、私たちはもう少し風俗雑誌「あまとりあ」の世界を歩いてみよう。創刊号には実質編集者である高橋鐵に加え、目立ったところでは丸木砂土(落語・演芸に詳しい)正岡容(いるる)、江戸明治風俗(特に小唄端唄の権威)平山蘆江、フィルタリングで弾かれそうな伊藤晴雨。4月号第2巻になると、雑俳句・川柳の岡田甫(はじめ)を加え、次号からは堀口大學の弟子(と自称?する)岩佐東一郎の艶詩が始まる。
以降、ちゃんばら映画の大井廣介、風俗といったら斎藤昌三、女体医学を語らせたら尽きることのない式場隆三郎、そして浮世絵の吉田暎二(8月号)。対談に古今亭志ん生(9月号)、次号ではリチャード・レイン、伊藤晴雨、高橋鐵の鼎談に、挿絵会からは(小唄絵が巧い)清水三重三を連れ出し、11月号では和田芳恵の樋口一葉。年内最終巻12月号の附録に伊藤晴雨「女体捕物帖」目次のカットは版画家の関野潤一郎という豪華版である。
伊藤晴雨:女体捕物帖(1951.12月号)
関野潤一郎の目次カット(1951.12月号)
関野潤一郎は戦後版画界の重鎮だが、目次だけでなくカットも描いているようでいくつか拾いだせる。またフィルタリングに掛かりそうな伊藤晴雨「女体捕物帖」は見事なもので、女性犯人をお縄にする課程でくんずほぐれつ、ようやく捕縛にいたるころには衣服ははだけ髪は乱れてと、なんとかブログでいけそうな折り帖の附録である。晴雨のファンは是非求めたらよろしかろう。
あまとりあ口絵
毎号〝あぶな絵〟の口絵がついている。和紙風の用紙ながら印刷はオフセットである。以上が創刊3月号~12月号(特別号含む)の概観である。くだらないと思われる向きには「まったくその通り」と応えざるを得ないが、江戸以来の艶笑好きの国民が国家に下半身を封印された怨念がふきだしたのか、権威をかさに検閲の鉈を振るう輩を「許すまじ」というのだから剛毅である。加えて彼らは戦争を体験したアナーキストでもある。その体をなした雑誌といえる。