宮本三郎南方従軍画集.05 | mizusumashi-tei みずすまし亭通信
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 宮本三郎南方従軍画集(1944)日本出版配給株式会社
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上掲は宮本三郎の従軍画集(昭和18年初版)手元にあるのは再版5000部(昭和19年)とあるから、ずいぶん評判が良かったのだろう。欧米諸国(特に大英帝国・アメリカ合衆国)の植民地支配から東アジア・東南アジアを解放し、日本を盟主とする共存共栄の新たな国際秩序を建設しようという大東亜共栄圏構想のもと、彼の地の紹介を兼ねて多くの画家が従軍画家として大陸に渡った。藤田嗣治や宮本などの大物から、大衆小説の挿絵画家まで、体力がありそうな若手はどしどしと渡海している。

従軍画家は一応(少尉中尉といった)階級をもらって兵隊待遇だったが、もちろん画家(の格)によってずいぶん待遇が違った。藤田や宮本などはどうも将校待遇だったようだが(大好きな挿絵画家の)林唯一など「一歩間違えば」全滅部隊に組み込まれるところだったようだ。前ブログで、敗戦後GHQによってこうした従軍画集は焚書されたが、まめにチェックしていると結構ネットで流通していて、さまざまなことが見えてくる。

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 宮本三郎と藤田嗣治(右端)

宮本はデッサン家として定評があったから戦争画の中核を担ったわけだが、この従軍画集のアジアの風景や風俗画などは、ためいきがでるほどに素晴らしい。戦争画をひとまとめにして〝ダメ〟ということになれば、敗戦までの10年間に描かれた多くは〝お蔵〟の烙印を押されるわけだが、そうではなくて、それらの絵を通して戦争の時代に絵を描くということは「どういうことなのか」ということを、各々考えてみるということではないのだろうかね。