太郎の上に次郎の上に雪は降り積む | mizusumashi-tei みずすまし亭通信
みずすまし亭通信-暫

雪が音も立てずに降り積もっていきます。雪片は翩々(へんぺん)と踊るよう、たがいに戯れ賑やかしく見えるのにまったくの音なしで、スピーカーの特性を調べる無音室にいるようです。そして、地面に着地したとたんに重なりあって眠りこけてしまいます。まるで、息絶えた累々たる屍体のごとくに。

雪片は私たちが吐き出した呪詛の抜け殻が天上に溜まりにたまって、こらえられずにこぼれ落ちるのだという人がいました。だから、嗤いフザケながら騒々しく舞い降りるのだけれど、呪詛の言葉は天空で浄化された白い抜け殻なので言葉や音を発しない。また、呪詛の抜け殻ゆえに雪の結晶はとげとげしているのだと説明します。
 
まぁ、雪が降ると冷えてなによりだという人もいます。温かい雪だと、蒸発が止まらずに延々と気化を続けて、海の水がなくなるまで降り積もるのだそうです。ついには、世界一の超高層ビル「ブルジュ・ドバイ」も東京タワーも、なにもかもが雪に埋もれてエヴェレストと富士の山頂が、少女の乳頭のように突き出しているばかり。温かい雪の中は母の胎盤のように居心地がいいから、皆母の膝を枕に眠るように息絶えてしまう。

さぁ、ばかな妄想をやめて早く帰りましょうね。